高市早苗新政権は、物価高に対応した経済対策の策定に着手する。裏付けとなる2025年度補正予算の年内成立が最優先課題となる。今後の経済財政運営では、高市氏が掲げる「責任ある積極財政」による財政拡張と、日本維新の会が訴える「歳出改革」とのバランスをどう取るのかが焦点となりそうだ。
自民党と維新による連立政権の合意書では、物価高対策としてガソリン税の暫定税率を廃止する法案の年内成立を明記した。高市氏は軽油の暫定税率廃止も目指すと表明。経済対策には維新が求める電気・ガス料金の補助金も盛り込む見通しだ。
26年度予算編成に向けては、維新の肝煎り政策である高校無償化の制度設計を月内に固める必要がある。11月から願書受け付けを始める高校もあり、対象範囲などの確定を急ぐ。小学校給食の無償化検討も課題だ。
高市氏は、半導体や人工知能(AI)など成長分野への積極的な財政出動を訴えてきた。これに対し、維新は膨らむ医療費の年4兆円削減など社会保障改革を柱とする「歳出改革」を重視。「小さな政府」を志向する維新の連立入りで「積極財政に歯止めをかけ、いわゆる高市カラーを弱めることになる」(エコノミスト)との見方もある。
難航必至なのは安定財源の確保だ。ガソリン・軽油の暫定税率廃止で年約1.5兆円の税収減が見込まれる。高校授業料と給食費の無償化では計7000億円規模の予算措置が必要となる。
かねて維新は企業向けの特例的な減税である租税特別措置(租特)の縮小による財源捻出を主張してきた。23年度の租特による税収減は2.9兆円。このうち賃上げ促進税制と研究開発税制で1.7兆円に上る。特定企業を優遇する「隠れ補助金」とも批判されるが、経済界からは「国内投資や賃上げに水を差す」と縮小への反発が強い。
また、連立合意書では2年間の食料品の消費税率ゼロを「検討」すると盛り込まれた。税収に年5兆円もの穴が開くことになるが、財務省は「実現時期は区切ってはいない」(幹部)として、維新の本気度を探る。
【時事通信社】
〔写真説明〕新首相に選出された高市早苗氏=21日、首相官邸(AFP時事)
2025年10月21日 20時23分