ホンダや日産自動車など自動車大手が相次いで打ち出す新型電気自動車(EV)で、陰の主役とされるのがバッテリーだ。各社とも軽量化の技術開発や中国メーカーで多く使用される種類を導入するなどして性能向上を図る。バッテリーはEVの航続距離や耐久性を左右し、車両価格の3分の1を占める。それだけに開発競争に熱が入る。
スズキが来年1月に発売する多目的スポーツ車(SUV)タイプの小型EV「eビターラ」では、中国EV最大手の比亜迪(BYD)など中国勢が得意とする「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」が採用されたことが話題を呼んだ。「リン酸鉄系」は、安全性と耐久性が高く、安価なのが利点。一方、蓄えられるエネルギーに関わる内部の密度が低く効率が悪いため、航続距離が伸びないとされてきた。
スズキの小野純生BEVB・C商品統括部長は9月半ばの発表会で、記者団に「安心・安全が第一。燃えにくく、耐久性が高い」と利点を強調した。課題の航続距離に関しても、バッテリー大手AESCジャパンの野田俊治常務は「積載方法を工夫することで密度を上げたことが突破口となった」と、性能向上が進んでいると明かす。
これに対し、欧米勢は主に「3元系リチウムイオンバッテリー」を採用。エネルギー密度向上や軽量化に向けた技術革新を競ってきた。
日本勢も「3元系」が主流で、ホンダが先月発売した軽EV「N―ONE
e:」でも採用。バッテリーの薄型化に成功し、一回の充電で走れる航続距離は国内の軽EVでは最長の295キロを実現した。日産の3代目「リーフ」も「3元系」だ。ただ、欧米勢でもリン酸鉄系採用の動きがあるとされ、今後、勢力図が変わる可能性はある。
一方、EVバッテリーで課題となっているのは、リサイクル体制の整備だ。野田氏は「今は中古品を回収する仕組みが確立されていない。国を挙げて規制する必要がある」と話す。特にリン酸鉄系は、原材料が安価なためリサイクルが進まないとの見方もあり、EVの普及とともにバッテリーの回収・再利用の仕組みの整備も急ぐ必要がありそうだ。
【時事通信社】
2025年10月19日 07時03分
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