首脳宣言「WTO」言及せず=米反発で表現後退―APEC閉幕



【慶州(韓国)時事】日米中など21カ国・地域で構成するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が1日、韓国・慶州で閉幕した。首脳宣言では「強靭(きょうじん)性を促進し、すべての人々に利益をもたらす貿易・投資環境の重要性を認識する」と記した。ただ、自由貿易体制の中核と位置付けてきた世界貿易機関(WTO)には言及しない異例の内容となった。

「多角的貿易体制への支持」も打ち出せなかった。米国の高関税政策で世界経済の不確実性が高まる中、米国を含む各国が自由貿易体制の堅持に向け、協調できるかが問われていた。だが、WTOの機能不全に不満を示し、保護主義に傾斜する米国の反発にあい、昨年ペルーで開いた会議でまとめた宣言から表現を大きく後退させた。

貿易・投資環境についても、昨年の「自由で開かれた」との表現は踏襲されず、代わりに「強靱性」といった自律性を強調する文言が盛り込まれた。ただ、合わせて採択された閣僚声明には、WTOについて「重要性を認識する」や「世界貿易の円滑化の鍵」といった表現が明記された。

宣言では、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想など地域経済統合を推進することも再確認。地域のサプライチェーン(供給網)強化の取り組みも支持した。

議長国の韓国が議題として設定した人工知能(AI)に関しては、安全性向上の努力の継続を開発者などに要請。少子高齢化などの課題への対応では政策協力の枠組みを承認した。文化・クリエーティブ産業では「強固な知的財産権保護の重要性」を強調した。

【時事通信社】 〔写真説明〕アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、記念撮影に臨む高市早苗首相(右から7人目)ら各国首脳=1日午後、韓国・慶州

2025年11月01日 19時39分


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