
高市内閣と参院のパイプ役を担う佐藤啓官房副長官(自民党参院議員)を巡り、国会で緊張が高まっている。派閥裏金事件に関与しながら選挙の審判を経ていない佐藤氏に野党が強く反発。参院の議事に出席できない状況が続くためだ。高市早苗首相が事態収束へどう対応するかが焦点だ。
首相が佐藤氏を起用したことについて、立憲民主党の斎藤嘉隆参院国対委員長は10月31日、国会内で記者団に「野党軽視という思いが非常に強い。この事態を収拾するのは政府・与党の責任だ」とけん制した。
佐藤氏は旧安倍派に所属し、同じく奈良を地盤とする首相とも近い。政治資金収支報告書に計306万円の不記載があり、今年1月の参院政治倫理審査会で弁明したが、7月の参院選は改選対象ではなかった。「みそぎを済ませた」とは言い難い。
自民幹部によると、自民と立民は参院で裏金議員の副長官は「認めない」との立場を事前に確認。野党は佐藤氏の起用案が浮上した段階で懸念を示し、自民は首相側に「国会運営に支障が出かねない」と複数ルートで伝えたが、人事方針は変わらなかった。
佐藤氏について、野党は議院運営委員会理事会への出席を拒否する。臨時国会への政府提出法案の説明は、衆院議員の尾崎正直官房副長官が代行した。自民の石井準一参院幹事長は「その状況が続くことは望ましくない」と指摘。党幹部は参院が重視する「院の独自性」が損なわれると懸念する。
首相の所信表明演説に対し、5、6両日に参院本会議で行われる代表質問に関しても、野党は佐藤氏の陪席を認めていない。
政府は佐藤氏の交代を否定し、自民側は首相の丁寧な説明や陳謝によって野党の態度が軟化する可能性を期待している。自民幹部は「首相がどう説明するのか。出入り禁止が解けるかは国会での答弁次第だ」と語った。
佐藤氏は旧安倍派元幹部の世耕弘成衆院議員とも近い。このため世耕氏と旧茂木派出身の石井氏の不仲が今回の事態に影響しているとの見方もある。
【時事通信社】
〔写真説明〕日韓首脳会談後、取材対応する高市早苗首相(右)の後ろに立つ佐藤啓官房副長官=10月30日、韓国・慶州
〔写真説明〕佐藤啓
官房副長官
〔写真説明〕参院国対委員長会談に臨む自民党の磯崎仁彦氏(右)と立憲民主党の斎藤嘉隆氏=10月31日、国会内
2025年11月04日 07時04分