
【ニューヨーク時事】昨年11月の米大統領選以降、米株式相場は大きく変動した。今年4月上旬にトランプ大統領が相互関税を打ち出すと、景気悲観論が台頭し、相場は急落。ただ、高関税政策の大幅な修正による不透明感の後退のほか、人工知能(AI)の成長拡大見通しが原動力となり、足元では最高値圏を維持する。トランプ関税が市場を翻弄(ほんろう)した形だ。
企業に国内投資を促すことで雇用増を目指すトランプ氏がほぼ全ての国・地域を対象とした相互関税を発表したところ、景気後退と物価高が同時に進む「スタグフレーション」の懸念が吹き荒れた。株・債券・通貨が売られる「トリプル安」に直面し、市場は大混乱。同氏の経済政策に期待した買いは消失し、4万2000ドル台で推移していた代表的な株価指標、ダウ工業株30種平均は数日で4000ドル超急落した。
トランプ氏はその後も中国への強硬姿勢をちらつかせるなどしたが、軌道修正を繰り返し、景気への配慮をにじませた。市場では同氏の言動に右往左往せず「状況を見極める」(日系証券)パターンが定着。1月の大統領就任前後と比べ、ダウは直近で1割弱高の4万7000ドル台、ハイテク株中心のナスダック総合指数は約2割上昇した。AI期待を支えに「株高は当面続く」(邦銀)と見込まれている。
連邦準備制度理事会(FRB)は9月から2会合連続で利下げを決めた一方、最近の物価上昇率は3%付近と、目標の2%を上回る。高関税に伴う「インフレの根強さは来年半ばまで続く」(米金融大手)との見方から、FRBが次回12月会合で利下げを見送るとの観測も浮上。FRBが利下げに慎重な「タカ派」色をより鮮明にすれば、市場には一転して逆風が吹き付ける。
【時事通信社】
〔写真説明〕国・地域別の相互関税率の表を掲げるトランプ米大統領=4月、ワシントン(AFP時事)
2025年11月05日 07時56分