
高市早苗首相は、少数与党の現状打開に向け、政策ごとの協力を否定しない国民民主、公明両党との連携を模索している。しかし、5日の代表質問で公明は野党色を鮮明にし、国民民主は独自政策の受け入れを矢継ぎ早に要求。苦しい立場を見透かされ、政権基盤の安定はなお見通せない。
「首相が先頭に立って問題の『全容解明』にあたってほしい」。野党として代表質問に臨んだ公明の斉藤鉄夫代表は、冒頭で自民党派閥の裏金事件を取り上げ、速やかな対応を訴えた。
これに対し、首相は「それぞれの議員が丁寧に、真摯(しんし)に説明責任を尽くしてきた」とこれまでの答弁を繰り返すだけだった。
斉藤氏はまた、首相が掲げる防衛力強化の方針について「防衛費の増額など防衛力だけを強め、外交のバランスを崩すことは、真の安全保障につながらない」と懸念を示した。防衛装備移転3原則に関する「5類型」の撤廃も「明確な歯止めが必要だ」と反対を明言した。
保守色の強い高市政権に、公明は警戒感を隠さない。党幹部は「政権と対決する。中途半端なことはできない」と距離を置く姿勢を強調した。
一方、国民民主の玉木雄一郎代表は代表質問で、高市政権がガソリン税の暫定税率廃止を受け入れたことを評価。その上で、所得税の課税最低ライン「年収の壁」引き上げに触れ、「この実現を決断すれば、政治の安定に向けた環境づくりに協力する」と呼び掛けた。
さらに、15歳以下の子どもを持つ親の税負担を軽減する「年少扶養控除」復活や、物価高対策としての灯油代補助などを主張。首相も、玉木氏が持論とする「教育国債」に関し、「新しい財源調達の在り方を前向きに検討している」と応じた。
ただ、国民民主との連携も一筋縄ではいきそうにない。玉木氏が、連立入りした維新との「差別化」を強く意識しているためだ。
実際、玉木氏は代表質問で企業・団体献金の規制強化に言及し、自民と維新の連立合意書は結論を先送りしていると批判。維新が重視する「副首都」構想の対案として、「特別自治市」制度を設ける国民民主の独自案を示し、首相に賛成を迫った。
維新幹部は「当てつけだ」と玉木氏への不快感を示した。自民内からは「維新と国民民主の駆け引きに巻き込まれる」(関係者)と不安の声が漏れる。
【時事通信社】
〔写真説明〕衆院本会議で代表質問する公明党の斉藤鉄夫代表(下)。右奥は高市早苗首相=5日午後、国会内
〔写真説明〕衆院本会議で代表質問に臨む国民民主党の玉木雄一郎代表(手前)。奥は高市早苗首相=5日午後、国会内
2025年11月06日 07時04分