米国防長官に戦争犯罪疑惑=「麻薬密輸船」攻撃で議会調査



【ワシントン時事】「麻薬密輸船」と疑われる船舶に対する攻撃を巡り、ヘグセス米国防長官の命令が戦争犯罪に当たる可能性があるとして、連邦議会が調査に乗り出した。米軍がカリブ海などで麻薬密輸阻止を名目とする船舶への攻撃を繰り返す中、作戦の合法性に疑念が強まっている。

発端となったのは、ワシントン・ポスト紙の11月28日の報道だ。それによると、米軍が9月2日、南米ベネズエラを出航した「麻薬密輸船」をカリブ海で攻撃した際、1度目の攻撃後に2人の生存者が残骸にしがみついていた。ヘグセス氏は指揮官に「全員殺せ」と命じ、2度目の攻撃で2人が「吹き飛ばされた」という。

報道を受け、一部の議員や国際法に詳しい専門家からは、2人の生存者が既に戦闘不能状態だったのに意図的に殺害したのは「戦争犯罪に当たる」との指摘が相次いだ。野党民主党のバンホーレン上院議員はテレビ番組で「戦争犯罪の可能性が非常に高い」と批判。与党共和党からも「事実なら極めて深刻であり、違法行為であることに同意する」(ターナー下院議員)との声が上がった。

上下両院もそれぞれ調査に乗り出した。下院軍事委員会のロジャース委員長(共和党)と野党筆頭理事のスミス議員(民主党)は共同声明で「報道を深刻に受け止めており、この作戦の完全な説明責任を求めるため、超党派の行動を取っている」と表明した。

米軍の密輸船攻撃を巡っては、もともと国際法違反の懸念が付きまとってきた。犯罪として取り締まるべき麻薬密輸に対する軍事力の行使は、自衛権の範囲外との見方が強いためだ。9月2日の攻撃は、80人以上を殺害してきた米軍の一連の作戦の最初のものだった。

ヘグセス氏は防戦を迫られている。ポスト紙の報道後にSNSで「偽ニュースだ」と反発し、攻撃の合法性を繰り返し主張した。レビット大統領報道官も今月1日の記者会見で「長官がそのような発言をしたことは決してない」と否定した。

トランプ大統領は11月30日、大統領専用機内で記者団に問われ、「私は2度目の攻撃を望まなかっただろう」と述べつつも、「ピート(ヘグセス氏)は2人の殺害を命じていないと言っている」と擁護した。

【時事通信社】 〔写真説明〕ヘグセス米国防長官=11月1日、クアラルンプール(AFP時事)

2025年12月03日 07時09分


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