
中国空母「遼寧」の艦載機が6日に航空自衛隊戦闘機に対しレーダー照射したことは、高市早苗首相の「台湾有事」を巡る国会答弁に反発した中国が、安全保障面で挑発に出た可能性もあり、予断を許さない。
日本政府は飛行の安全に関わる危険な行為と中国側に抗議したが、対話のチャンネルが機能しなければ意思疎通の欠如による偶発的な衝突も懸念される。
今回の事案は首相答弁後、中国軍の活動に変化がないか自衛隊が中国艦隊の動向に神経をとがらせていたさなかに起きた。ロイター通信は4日、中国が東アジア海域に、異例の規模となる100隻以上の海軍艦船と海警局公船を一時展開させたと報じていた。
今回、「遼寧」のJ15戦闘機は、沖縄本島南東の公海上で空自機に対し、最長約30分間にわたり、断続的にレーダーを照射した。照射目的は不明だが、位置関係の確認だけでなく、攻撃対象機に照準を合わせる示威行為とも受け取られかねず、自衛隊関係者は「相手の意図が不明なまま断続的に照射を受けた。自衛隊なら決して行わない行為で、パイロットが危険を感じてもおかしくはない」と話す。空自機内では照射を感知するセンサーが反応したという。
6月にも中国空母「山東」のJ15戦闘機が、太平洋上で海自機に異常接近した。2014年には沖縄県尖閣諸島を含む東シナ海の日中の防空識別圏が重なる空域で、警戒監視に当たった自衛隊機に中国戦闘機が約30メートルの近さまで接近したケースもある。
政府関係者は「中国が今後、東シナ海や太平洋側での軍事訓練などを通じて威圧的に行動する可能性も排除できないが、冷静に対応する」と話す。防衛省は今回、日中防衛当局間の「ホットライン」(専用回線)が使用されたかについて「個別事案における使用状況は答えられない」として、明らかにしていない。
【時事通信社】
〔写真説明〕中国海軍の空母「遼寧」(防衛省提供)
2025年12月08日 07時06分