
性別に基づく差別の撤廃や、女性が能力を発揮し意思決定に参加できる社会をつくろうと取り組んでいる国連女性機関(UNウィメン)。日本事務所長に昨年2月に就任した焼家直絵さん(52)は性別に関するステレオタイプ(固定観念)の解消に力を入れる。3月8日の国際女性デーを前に時事通信のインタビューに応じ、女性に対する固定化されたイメージを変えるにはメディアや広告の作り手の多様性確保が重要だと強調した。
UNウィメンが約5年前に実施した国際調査では、日本人は約7割が「広告の中に自分の姿を見いだせない」と感じているという結果が出た。国際化など社会の広がりに伴い、人々の価値観は多様化している。広告での「男性は強い」「女性はピンクが好き」といった一面的な描かれ方には、しっくりこないと感じる人も多い。
焼家さんは「広告には社会規範を変革する力がある」と、社会的な影響力が大きいメディアや広告の役割に期待を示す。UNウィメンが2020年に発足させた「アンステレオタイプ・アライアンス日本支部」には、資生堂など複数の企業が加盟し、「女・男はこうあるべきだ」といった固定観念を突き崩すために活動している。
同アライアンスが、約6000本のCMを対象に行った調査では、性別の多様性に配慮した広告は長期的な売り上げを約16%増加させるという結果が出た。焼家さんは「企業が多様性を取り入れることは、実際にビジネス効果がある」と話す。
20年以上勤めた国連機関での自身の経験を踏まえ、出身地や性別などが異なる人で構成されたチームほど新たな発見が生まれやすいと指摘。広告などの作り手が「多様性はイノベーションにつながる」ことを認識し、「(制作に)多様な人が関わることが大事だ」と強調した。
ジェンダー平等などに関する大学などでのイベントでは「まだ少人数ではあるが、男子学生も参加するようになった」と、多様性の大切さについての認識が広がってきたと手応えを感じている。今後の取り組みについては「女性像も男性像も固定化せず、双方が生きやすい社会づくりを目指したい」と語り、「男女ともに巻き込んだムーブメントを続けていきたい」と意気込みを示した。
【編集後記】米ミズーリ州立大学の研究によると、子どもは3歳ごろには固定観念を身に付け始めるそうだ。広告には「分かりやすさ」が求められる半面、人の属性を何らかの「型」に当てはめてしまう危険性をはらむ。幅広い層にアプローチができ、印象に残る表現が求められるからこそ、いっそう多様性への配慮が必要になると感じた。(時事通信経済部記者・徳田詩)。
【時事通信社】
〔写真説明〕インタビューに応じる国連女性機関の焼家直絵さん=1月21日、東京都文京区
〔写真説明〕インタビューに応じる国連女性機関の焼家直絵さん=1月21日、東京都文京区
〔写真説明〕国際女性デー2026
2026年03月03日 07時05分