自動音声案内、なぜ「女性」?=家電・カーナビ・新幹線…―識者「性差別考える契機に」・国際女性デー



給湯器やカーナビによる自動音声案内。生活に不可欠な音声だが、その多くは「女性」の声で、背景には「女性は生活を補助する者」という固定観念の存在も指摘される。3月8日の「国際女性デー」を前に、専門家は「女性の声ばかりだと違和感を抱いたら、それを入り口にして身の回りにある性差別について考えてほしい」と話している。

「お風呂が沸きました」。給湯器大手のリンナイ(名古屋市)の給湯リモコンの音声は女性だ。同社は「バスや野球場の案内では女性の声が多い。女性が入浴中に男性の音声を聞いたら驚く可能性も考慮した」と説明。全日空(東京都港区)でも機内の自動音声は女性で、同社は「女性の客室乗務員が多かったこともあるのでは」と指摘する。

エレベーターの階層案内も女性の声が多いが、発売する日立ビルシステム(千代田区)や三菱電機ビルソリューションズ(同)は明確な理由について「分からない」「ありません」とそれぞれ説明。JR西日本(大阪市)も、山陽新幹線内の自動放送は女性の声だが「記録が残っていない」としている。

科学的な説明がある例も。カーナビ大手のパイオニア(文京区)は、製品開発時にテストを重ねた結果、「走行中の車内では高めでクリアな声が聞き取りやすい」として女性の声を採用した。

男女の声で差はあるのか。早稲田大の倉片憲治教授(聴覚心理学)は「一般論として言えば、女性の高い声の方が聞き取りやすく意味も伝わりやすい」と話す。ただ、大差はないといい、「どの言語でも同じだが、一番重要なのは声の高さよりも、ゆっくり滑舌良く話すことだ」と強調する。

では、なぜ女性の声が多いのか。音声メディア研究を専門とする立命館大の坂田謙司特任教授は「女性は丁寧で優しく、接客業に向く」というジェンダーバイアス(性別に基づく思い込みや偏見)の存在を指摘する。その上で「女性は生活の補助やガイド的な役割を担っているとされ、音声案内も女性の声に設定されたのでは」と推測する。

一方、ビルなどで火災発生を伝える非常用放送設備は男性の声だけだ。総務省消防庁の告示で定められているためで、同庁の担当者は「避難を促すための強い誘導効果が必要とされ、男性の声になったと考えられる」と指摘。坂田さんも「危険が迫った際の行動命令は男性が出すものと考えられているためでは」と語る。

案内は女性で、命令は男性。「それ自体は性差別とは思えないが、バランスの悪さや不自然さはあり、ジェンダーバイアス強化になり得る」と語る坂田さん。「もし音声が女性ばかりなことに違和感を抱いたらそれを入り口とし、身近にある偏りや性差別がなぜ存在するのか改めて考えてみてほしい」と訴えている。

【編集後記】「お風呂が沸きました」「間もなく目的地周辺です」。普段よく聞く音声案内だが、その声は「女性」ばかりだ。ただ、取材するまでその理由について深くは考えてこなかった。

それだけに、坂田さんによるジェンダーバイアスの指摘には思わずうなずいた。「違和感を抱いたらそれを入り口とし、身近にある偏りや性差別について考えてほしい」。記者になって四半世紀。坂田さんの言葉を心に留め、「違和感」に正しく反応できる記者を目指したい。(時事通信社会部記者・今井直樹)。

【時事通信社】 〔写真説明〕国際女性デー2026 〔写真説明〕坂田謙司

立命館大特任教授(本人提供)

2026年02月26日 17時42分


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