
首都直下地震の新たな被害想定では、火災による死者が約1万2000人となり、2013年の前回想定から約4000人減少した。東京都はこの間、大規模火災の恐れがある「木造住宅密集(木密)地域」を解消するため、23区などと協力して「不燃化」を推進してきた。木密地域面積は減少したものの、進み具合には地域差も生じており、取り組みはまだ道半ば。都は震災時の延焼対策に引き続き力を入れる方針だ。
木密地域は、老朽化した木造家屋が多く、火災が広範囲に及ぶリスクが高い。都は12年以降、特に大きな被害が予想される23区内の「整備地域」28カ所を対象に、助成金の支給などを通じて、耐火性のある建物への建て替えや耐震化、延焼を遮断する道路の整備を集中的に行ってきた。
その結果、10年1月時点で約1万6000ヘクタールあった都内の木密地域は、25年3月時点で約7100ヘクタールに減少した。整備地域では、燃え広がりにくさを表す「不燃領域率」が徐々に向上し、23年度末時点で66.4%。都は30年度までに、延焼による危険性がほぼ無くなるとされる70%への引き上げを目指す。
既にこの目標を上回ったところがある一方で、達成に程遠い地域もある。大田区の「羽田地域」は、11年度から9ポイント上がったものの、現時点(23年度)は57.7%にとどまる。区の担当者は「対策の柱は住宅の不燃化だが、住民それぞれの生活や事情に合わせて建て替えているため、加速度的に進めることは難しい」と実情を語る。
物価高騰により、建て替えや耐震化のコストが上昇し、各自治体からは対策の足踏みを懸念する声が上がっている。江戸川区の担当者は「地域には高齢住民が多く、相続や資金面で悩みがある人もいる」と話し、支援拡充の必要性を認めた。
【時事通信社】
〔写真説明〕東京都大田区の老朽化した木造住宅密集地域=13日
2025年12月19日 20時32分