威嚇の太平洋、Uターン=中ロ、日米反応試したか―空母と爆撃機・防衛省



中国空母「遼寧」の艦載機による自衛隊機へのレーダー照射や中国・ロシア爆撃機の共同飛行による威嚇的な行動で、遼寧と爆撃機は四国から紀伊半島沖にかけた太平洋のほぼ同じ経度でUターンしていたことが防衛省関係者への取材で分かった。日米の抑止力が試された可能性がある。

当時、関東南方海域では米第7艦隊の空母「ジョージ・ワシントン」(GW)が海上自衛隊と共同訓練しており、中ロが東進せず、GWの防空圏や活動海域と一定の距離を置いたとの見方がある。政府筋は「意図は明らかではないが、日中関係悪化に伴い安全保障面での日米の反応を見た上で、米軍を刺激することは外交上の判断からも避けたのではないか」と指摘した。

12月6日の照射事案後、遼寧は南西諸島沖を北東に航行したが徐々に時計回りに針路を変え、8日に紀伊半島のはるか南方、太平洋の東経136度付近まで東進。その後は南西に転進し最終的に東シナ海に戻った。自衛隊関係者は「遼寧は補給艦を伴っており、さらに東進することは可能だったはずだ」と分析する。中ロ爆撃機も9日に四国沖を飛行したが東経135度を越えた辺りで引き返した。

米軍によると、空母ワシントンは12月1日にグアムに寄港。その後、横須賀基地(神奈川県)に向け太平洋を北上したとみられる。8日から11日にかけては関東南方で海自護衛艦「あきづき」(長崎県・佐世保基地)とデータリンクシステムを使用した情報共有訓練をした。同システムを介して探知目標や敵味方の識別も共有できるという。

第7艦隊は訓練目的について、日米の継続的な相互運用性の向上などを挙げ「日米同盟は地域の安全保障の礎」としている。

9日の中ロ共同飛行の翌日、米本土配備のB52戦略爆撃機が日本海で空自機と共同訓練をしたが、米太平洋空軍(ハワイ)は「あらかじめ計画された定期訓練」と説明。その上で「爆撃機任務部隊(BTF)はあらゆる不測の事態に対応し、インド太平洋地域における安全保障上の義務を果たす能力を示す。即応体制の維持は戦略的抑止力として極めて重要」とコメントした。

【時事通信社】 〔写真説明〕中国軍のH6爆撃機(防衛省提供) 〔写真説明〕中国海軍の空母「遼寧」(防衛省提供) 〔写真説明〕関東南方の海域で、共同訓練する海上自衛隊の護衛艦「あきづき」(手前)と米第7艦隊の空母「ジョージ・ワシントン」=9日(海上自衛隊提供)

2025年12月29日 07時09分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース