
若者が性や体の悩みを看護師らに「ワンコイン」で相談できるユースクリニック。各地に広まりつつあるが、認知度はまだ低い。約4年前から運営する産婦人科医の木崎尚子さん(45)は「自分で抱え込まず気負わずに来てほしい」と呼び掛ける。
ユースクリニックは1970年代にスウェーデンで始まった。日本には2022年度時点で60カ所ほどあり、主に25歳以下の若者から、無償かそれに近い料金で悩み相談を受ける仕組みを取っている。
木崎さんは21年10月、横浜市に産婦人科のクリニックを開院した際、「婦人科の敷居を下げ若いうちから気軽に話せる環境を」と考え、ユースクリニックを併設した。中学生から22歳ぐらいまでを対象に、看護師や助産師が約30分、話を聴く。料金は500円で保険証は不要だ。
相談の多くが女性で、生理や月経前症候群(PMS)に関する内容が多い。生理不順や重い生理痛など、診察が必要と思われる場合は婦人科の受診を勧めることもある。
「避妊方法を知りたい」「性欲が強くて困っている」。相談や訴えを看護師らは丁寧に聴き、正しい知識を伝えたり、性病検査につなげたりする。神奈川県外から訪れる人もおり、木崎さんは「話せる場を提供できている実感がある。どこに相談したらいいか分からない人の最初の一歩にしたい」と意気込む。
課題は資金不足だ。木崎さんは「もっと来てもらえるように宣伝したいが、なかなか手を広げられない」と複雑な心情を明かす。国や自治体からの補助などはなく、赤字覚悟で行っているのが現状だ。
性教育普及への支援を行う一般社団法人「ソウレッジ」(東京都渋谷区)によると、ユースクリニックは本業である医療機関の売り上げなどでやり繰りするケースが多い。代表理事の鈴木莉帆さん(29)は「ボランティアでやっているような状況は変えていかないといけない」と力を込める。
ソウレッジは、ユースクリニックの寄付集めの支援にも取り組んできた。鈴木さんは「性に関して相談する信頼できる場所があるのは子どもにとって重要だ」と強調。今後も政策提言などを通じ、安定した運営の実現を目指していくという。
【時事通信社】
〔写真説明〕取材に応じる産婦人科医の木崎尚子さん=11月12日、横浜市
2025年12月27日 19時01分