空襲被害救済、「諦めない」=戦後80年でも宿願果たせず―法案提出へ足踏み



戦後80年の節目の年が間もなく暮れる。太平洋戦争時の空襲で被害を受けた民間人に対する救済を長年訴えてきた全国空襲被害者連絡協議会(全国空襲連)のメンバーらは今年、「ラストチャンス」と意気込んで活動に力を入れたが、願いはかなわなかった。それでも「絶対に諦められない」と決意を新たにしている。

民間人の空襲被害を巡る訴訟では、戦争被害は国民が等しく我慢しなければならないとする「戦争被害受忍論」を盾に、国による補償を求めた被害者の訴えは全て退けられた。全国空襲連は議員立法による救済実現に向けてかじを切り、超党派の国会議員連盟と10年以上にわたって協議を重ねてきた。

今年5月、議連が救済法案の原案を初めて決定。政府による被害の実態調査などのほか、障害を負った生存者に一時金50万円を支給する内容で、対象者は推計約3200人、総額16億円程度と見込む。

元軍人や軍属、その遺族らに支払われた恩給や年金の総額60兆円と比べるとごくわずか。東京大空襲で母親と弟2人を亡くした全国空襲連の河合節子さん(86)は「十分だとは誰も思っていないが、法案を通すためにハードルを下げた」と説明する。

それでも自民党内などでの調整がつかず、今年前半の通常国会での法案提出は見送られた。秋の自民総裁選では、高市早苗氏が全国空襲連の公開質問状に「対策が急がれる問題。しっかりと協議させていただきたい」などと回答し、期待が高まったが、臨時国会も動きがないまま今月17日に閉会した。

「今年こそは」との思いで1年を過ごしてきたという安野輝子さん(86)=堺市=は、6歳の時に鹿児島県内の空襲で左膝から下を失った。臨時国会閉会日の集会では、「謝罪や救済もないまま80年間も放置されてきた。これから生きる子たちのためにも成立させてほしい」と訴えた。

こうした中、東京都世田谷区議会は1人3万円の見舞金を支給する条例を5日に可決。名古屋市や浜松市など、独自に見舞金を支給する自治体も増えている。

議連会長の平沢勝栄衆院議員(自民)は集会で「政府が解決すべき問題だ」と強調。あくまでも救済法成立を目指す考えを示したが、具体的な道筋は見えないままだ。

【時事通信社】 〔写真説明〕民間人の空襲被害救済法成立に向け、互いを励まし合う河合節子さん(右)と安野輝子さん=17日、東京都千代田区 〔写真説明〕国会前で民間人の空襲被害救済を訴える全国空襲被害者連絡協議会の河合節子さん=4日、東京都千代田区 〔写真説明〕民間人の空襲被害者救済を訴える安野輝子さん=17日、東京都千代田区

2025年12月28日 07時10分


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