
前知事のセクハラ問題を受け、風土改革を誓う福井県。再起に向け、女性活躍推進で先頭に立つ副知事の鷲頭美央さん(45)は夫を都内に残し、小学生の娘2人と共に福井で暮らす。仕事と家事・育児の両立の秘訣(ひけつ)は一人で抱え込まず、周囲の人や制度に頼ること。「誰もが安心して活躍できる社会づくり」に奮闘する。
県では1月、前知事の女性職員に対するメッセージ約1000件、身体的被害3件がセクハラと認定され、鷲頭さんは謝罪会見に臨んだ。県は2月、県議会に特別職も対象としたハラスメント防止の条例案を提示。鷲頭さんは「防げなかったことがとても悔しい。二度と繰り返さないため、職員の声を聞きながら継続的に取り組む。日本一働きやすい組織になるように全力を尽くす」と語る。
総務省出身の鷲頭さんは2022年4月、県総務部長として赴任。夫と分担していた家事と育児の負担が自身に偏ることに不安を感じたが、地方での仕事に魅力を感じ「子連れ赴任」に踏み切った。
23年8月には副知事に就任。平日は定時退勤して小学3年と6年の娘を迎えに行き、夕飯を作った後、子どもの宿題や翌日の準備を確認する。時間外や休日の仕事の際は、県のシッター派遣制度や両親、夫に頼る。緊急時の出勤に備え、普段からシッターや同僚のママ友、隣人などに子どもと人間関係を築いてもらうなど「重層的なリスクヘッジ」も欠かさない。
職場の理解と住環境もカギとなる。相手の事情にも配慮しつつ、仕事はなるべく早朝や夜を避けてもらう。総務部長時代にはオンライン化により在宅勤務を実現し、子どもが体調不良の際にも活用。通勤時間10分の職住近接を生かし、仕事の合間に娘の授業参観に行くこともある。
家事が面倒なときには掃除のサービスや夕食のデリバリーを頼み、外食や銭湯を楽しむことも。「手を抜けるところは抜くのが肝心。サボって遊ぶのが得意」と話す。
子どもの前でも「疲れたな」「面倒くさい」と本音を言う。子どもから言われたことを忘れるといった失敗もあるが、「きちんとしていない部分をさらけ出すことで、子どもも本音を言いやすい」と笑う。「真っ白な雪や田園風景など、都会では得られない情景を子どもの人生に刻むことができた」と満足げだ。
◇子育てを「強み」に
総務省入省当時は残業が前提。突発的な対応ができることも人事配置に反映されていたと感じる。出産後は労働時間が制約され、男性との「大きな差」を実感した。
一方、出向したさいたま市や福井県では、労働時間の長さではなく業務で実績を挙げることが評価された。社会の価値観の変化もあり、今は「仕事と家庭の両立は個性で強み」と捉えている。
「企業や地域の意思決定に女性も参画し、意見や価値観を尊重し合いながら対話していくことで社会が変わる」。鷲頭さんは自らの経験を踏まえ、「社会を変える第一歩は自分らしく楽しむこと」と次世代にエールを送る。
【時事通信社】
〔写真説明〕インタビューに答える福井県副知事の鷲頭美央さん=2月10日、同県庁
〔写真説明〕国際女性デー2026
〔写真説明〕インタビューに答える福井県副知事の鷲頭美央さん=2月10日、同県庁
2026年03月08日 14時36分