
東日本大震災で行方不明となった岩手県山田町の山根捺星ちゃん=当時(6)=の骨の一部が発見され、昨年10月、14年ぶりに遺族の元に返された。身元を特定したのは2011年11月に発足した宮城県警捜査1課の身元不明・行方不明者捜査班。班長の京野祐也警部(43)は「ご遺体一体一体に待っている人がいる。返すべき所に返すのがわれわれの仕事」と話す。
23年2月、宮城県気仙沼市と南三陸町を清掃後、分別作業をしていた会社から「人骨らしきものを発見した」と南三陸署に届け出があった。同様の報告は年間十数件寄せられるが、多くが犬や猫など動物の骨。しかし、後日、署に届けられたものは人の顎の形をしており、歯も数本付いていた。
捜査1課の検視担当者は、大きさや発見状況から震災で行方不明になった子どもの骨の可能性が高いと判断し、捜査班に身元特定作業を引き継いだ。
捜査班は専門機関と協力し、母系の血縁関係を調べるミトコンドリアDNA型鑑定や、歯のタンパク質から性別を特定するプロテオーム解析を実施。そして昨年9月、行方不明届を出していた母千弓さん(49)のDNA型と照合し、捺星ちゃんの骨と特定した。
捜査班は同10月2日、捺星ちゃん宅を訪れ、発見や特定の経緯を説明した。対応した父朋紀さん(52)と千弓さん、捺星ちゃんの兄(26)は、涙ぐみながらも終始落ち着いた態度で、耳を傾けたという。
同16日、南三陸署で返還式が行われた。署長から受け取った遺骨を大切に抱きしめる千弓さんを見て、京野さんは「遺骨一体一体に待っている家族がいる」と強く感じたという。
朋紀さんらは「お世話になりました」と謝意を伝え、雨が降りしきる中、遺骨を持ち帰った。署の前で車を見送った京野さんは「無事に帰れてよかった」と思いながら深々と頭を下げた。
捜査班の活動などにより、県警はこれまでに9537体の身元を特定した。しかし、損壊が激しい遺体など6体はいまだ確認に至っていない。京野さんは「今回は『人骨かもしれない』という一般の方の気づきで特定につながった。疑問に思うことがあったら、気軽に警察に連絡してほしい」と呼び掛けている。
【時事通信社】
〔写真説明〕宮城県警の身元不明・行方不明者捜査班で班長を務める京野祐也警部(右)=2月20日、仙台市青葉区
〔写真説明〕宮城県警の身元不明・行方不明者捜査班の部屋。中央奥は班長の京野祐也警部=2月20日、仙台市青葉区
〔写真説明〕宮城県警の身元不明・行方不明者捜査班で班長を務める京野祐也警部=2月20日、仙台市青葉区
2026年03月08日 07時06分