おかみ「もう一度再建したいが…」=有形文化財の旅館、10年前も被害―熊本・八代の日奈久温泉街



震度6強の揺れに襲われた熊本県八代市の日奈久温泉街。明治時代に創業し、国の登録有形文化財の旅館「金波楼」も大きな被害を受けた。おかみの松本美佐緒さん(72)は「もう一度再建したい」と話すが、被災状況は10年前の熊本地震よりも深刻だという。再建にかかる費用や期間も見通せず、「どれくらい休んだら復活できるのか。そもそも復活できるのか」と複雑な心境を吐露した。

金波楼は1910(明治43)年に創業。伝統的な木造建築で、本館や正門などが登録有形文化財となっている。八代海に沈む夕日が波に映り、金色に輝く様子が名前の由来となっている。

2016年の熊本地震では、壁がひび割れるなどして修繕のために約3000万円を借り入れ、約1年後に営業を再開した。「お客さまから『来て良かった。また来ますね』という言葉をもらうために日々仕事をしている」と話す松本さん。利用客の笑顔を励みに家族で働き、借金の半分を返済したところに、今回の地震が発生した。

激しい横揺れが旅館を襲い、ミシミシというきしむ音とガラス戸が割れる音が響いた。利用客の無事を確認して見送ろうとした際、倒壊した玄関と正門が目に飛び込んできた。「正門は『旅館の顔』だった。もう終わった」と感じた。

廊下は隆起し、しっくいの壁には再び亀裂が入った。木片やガラス片が至る所に飛散し、大広間の舞台飾りも崩れ落ちた。「(余震で)壁のひびもひどくなっていく。片付けようにも片付けられない」と唇をかむ。

松本さんにとって「仕事場であり、生活の場であり、子育てした場であり、孫の世話をした場でもある」という金波楼。貴重な文化財としても「残していかなければならない」との思いがある。一方、4代目社長の長男が再建のための借金を背負うことになることを気に掛け、「(再建を)強く言うことは難しい」と胸中を明かす。

地震後、「また泊まりに行きます」「頑張ってください」といった励ましの連絡が届いている。「できることならもう一度、お客さんを受け入れたい」。再建への願いと将来への不安の間で、思いは揺れている。

【時事通信社】 〔写真説明〕日奈久温泉にある国登録有形文化財の旅館「金波楼」。正門や塀が崩れるなどした=7月30日、熊本県八代市 〔写真説明〕倒壊した玄関を見詰める旅館「金波楼」のおかみ、松本美佐緒さん=7月30日、熊本県八代市 〔写真説明〕壁が崩れ落ちた旅館「金波楼」の館内=7月30日、熊本県八代市

2026年08月05日 07時03分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース