
【台北時事】台湾で4年に1度実施される統一地方選(11月28日投開票)まで1カ月。2024年に就任した頼清徳総統にとっては初の大型選挙で、28年次期総統選の前哨戦とも位置付けられる。一斉に行われる22県市長選のうち政治経済の中心地・台北市は、頼氏が抜てきした与党・民進党の新人候補で立法委員(国会議員)の沈伯洋氏(44)が最大野党・国民党の現職を猛追。かねて沈氏を敵視する中国は選挙への圧力を強めている。
◇「洋流」に現職危機感
沈氏は台湾世論の誘導を図る中国の「認知戦」を研究する法学者で、有事などに対応する人材育成に向けた「黒熊学院」の共同創設者。24年に立法委員に就任し、同年に中国から「頑迷な台湾独立分子」として制裁対象に指定された。
ところが沈氏は市長選出馬以降、対中発言をほぼ封印。街頭活動では市民との一対一の討論を丁寧にこなし、都市緑化や子育て支援などの政見を巧みな弁舌で訴える。沈氏の選挙集会やビラ配りには、名前の一文字から「洋流」と呼ばれる支持者の人波が押し寄せ、日増しに拡大している。
一方、再選を目指す蒋万安市長(47)は蒋介石初代総統のひ孫として知名度が抜群だ。16年から立法委員を務め、22年から現職に就いており、国民党の次世代のホープ、将来の総統候補と目されている。再選は当初盤石とみられていたが、台北市は「中国大陸から移った国民党の色が濃い選挙区だが、絶対的ではない」(党関係者)。蒋氏も選挙情勢は「切迫している」と危機感をあらわにしている。
民放TVBSの世論調査では、5月の支持率は蒋氏58%、沈氏30%だったが、今月上旬は蒋氏49%、沈氏41%と接近。別の二つの世論調査では、沈氏がトップに立っている。
◇中国が「選挙介入」
こうした中、台湾の著名司会者で中国でも活動する蔡康永氏が、沈氏の集会に出席後、中国企業に契約を相次ぎ打ち切られるという出来事があった。中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は14日、「大陸で稼ぎながら台湾独立勢力と結託してはならない」と蔡氏に警告。これとは別に、沈氏の父親が経営する会社への制裁措置も発表した。
頼政権で対中政策を所管する大陸委員会は「中国の露骨な選挙介入」を批判した。民進党中国事務部の呉峻※(金ヘンに志)主任は取材に「『洋流』の出現は中国に大きな衝撃だ」と指摘。選挙中の圧力は反中感情を高め、かえって沈氏を助ける可能性があるが、「逆効果と知りながら脅すのは、譲歩したと見られたくないためだ」と分析した。
【時事通信社】
〔写真説明〕市長選のビラを受け取る人々に囲まれる台湾与党・民進党の候補、沈伯洋立法委員(中央)=22日、台北
〔写真説明〕台湾最大野党・国民党の選挙集会に参加する台北市長の蒋万安氏(中央)=16日、同市
2026年10月28日 07時15分