
東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働が、花角英世知事の容認意向表明で大きく動きだした。東京電力ホールディングス(HD)は再稼働を「最重要経営課題」と位置付け、年約1000億円の収支改善を期待する。しかし、2011年の福島第1原発事故に伴う廃炉負担や賠償などもあり、関連費用が今後膨らむ可能性もある。経営安定化の道のりはいまだ見通せない。
東電HDは、12年3月に柏崎刈羽原発6号機を停止して以降すべての原発が止まっており、液化天然ガス(LNG)や石炭を燃料とする火力発電への依存を余儀なくされている。24年度時点で、事故前の10年度に電源構成の約3割を占めた原発がゼロとなり、6割程度だった火力発電は約8割まで上昇している。6号機を再稼働することで、価格の高止まりが続く化石燃料の使用量を削減し、収支を改善したい考え。電源の脱炭素化や、首都圏の電力の安定供給につなげる狙いもある。
ただ、原発事故の処理費用約23兆円のうち、東電HDの負担額は約16兆円に上る。賠償と廃炉の費用として年5000億円程度を確保する目標を掲げるが、綱渡りが続く。東電HDの小早川智明社長は「投資の厳選など聖域なき合理化を徹底的に進める」と説明するが、25年9月中間連結決算では、廃炉関連費用9000億円超を損失計上した影響で、純損益が過去最大の赤字となった。
厳しい財務状況の中、東電HDは地域経済活性化のため、新潟県へ1000億円規模の資金を拠出すると表明した。事故を起こした東電HDが再び原発を稼働することへの地元の不安は大きく、踏み込んだ対応を取らざるを得なかった。「(県民の)信頼を得ることは簡単ではない」(小早川社長)中で、賠償・廃炉といった費用が経営を圧迫し続けるいばらの道が続く。
〔写真説明〕東京電力ホールディングスの小早川智明社長
2025年11月22日 09時07分