「トランス女性は女性」=タイ、法的には認められず―寛容イメージでも課題・国際女性デー



2025年1月に東南アジアで初めて同性婚を合法化し、性的少数者に対して寛容なイメージが根付くタイ。タイ観光庁も「LGBTQ+フレンドリーな国」としてアピールする。一方で性別変更は法的に認められておらず、支援者らは、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの女性が「法的手続きでは男性を演じる必要があり、精神的負担は大きい」と指摘。当事者や支援者の「トランス女性は女性」という訴えが、法律に阻まれている。

◇「自分ではない誰か」演じる

LGBTQ+支援団体「チェンライ・プライド」の代表を務めるプリヤーゴーン・ムアンマラさん(37)は、トランスジェンダーは「自分ではない誰かとしての演技を強いられている」と語る。さらにトランス女性は、「(出生時の性と自認する性が一致する)シスジェンダー女性を脅かす存在」と見なされ、攻撃の標的になりやすいと指摘する。

バンコクに暮らすトランス女性のナパット・カムサワングさん(23)は、役所などでの身元確認を煩わしく感じたことがあると打ち明ける。女性の名前に変更するまでは、男性の名前が書かれた文書と女性らしい姿を見比べて「『本当にあなたですか』と疑われた」という。

チェンマイ在住のトランス女性のチッヌポン・ニティワナさん(30)は大学生時代、学生証の性別欄に「男性」と記載し、証明写真も男性の服装を求められるなど、「ありのままの私でいられなかった」と振り返る。

▽政府支援拡充も情報不足

政府による医療制度面でのトランス当事者支援が進む一方、情報不足に不満の声も上がる。

保健省は25年1月、ホルモン治療向けに1億4500万バーツ(約7億2000万円)を割り当てた。ホルモン剤を服用しているカムサワングさんは、支援拡充を歓迎する半面、性別適合手術については「十分な情報収集ができず、どの程度の支援が受けられるか分からない」。健康への影響や金銭面で不安が残ると語り、「手術を受けるかどうか決めかねている」と心情を吐露した。

◇職業選択にハードル

タイでのLGBTQ+支援活動を評価され、24年に米誌タイムの「次世代の100人」に選出されたショドラきょうかさん(20)は、外国人がタイに対して抱く寛容なイメージと、当事者の実際の生活には乖離(かいり)があると指摘する。美容やエンタメ業界を除くと、トランス女性が安心して働くことができる場は限定的で、「どこにも働く場所を見つけられずに性産業に行き着く人も少なくない」という。ショドラさんは「誰もが自分として生きていけることが大切だ。まだまだ改善すべき法律や社会的問題がある」と訴える。

【編集後記】自分ではない誰かの演技を強いられ続けることは、とても酷だ。支援者らの活動や政府の取り組みが広がり、あらゆる人が自分らしさを犠牲にすることなく生きられる社会を願う。(時事通信外国経済部記者・木村有希子)。

〔写真説明〕LGBTQ+の権利向上を訴えるイベントに参加するトランス女性(中央)ら=2025年6月、タイ北部チェンライ市(チェンライ県行政機構提供) 〔写真説明〕国際女性デー2026 〔写真説明〕インタビューに応じるナパット・カムサワングさん=1月12日、バンコク 〔写真説明〕チッヌポン・二ティワナさん=2025年7月、米ニューヨーク(本人提供) 〔写真説明〕ショドラきょうかさん=2025年5月、パリ(本人提供)

2026年03月09日 08時21分


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