
多くの人が幼少期に触れ、その後の価値観の形成に影響を与えるのが玩具。かつては、おもちゃ屋でも「女の子向け」「男の子向け」と区別されて陳列されることが多かったが、時代に合わせて性別による線引きは薄れてきている。多様性を受け入れる社会へと、子どもの目に映る世界から見直す動きがメーカーにも浸透してきた。
◇子どもたちの環境に合わせ変化
「多様性を受け入れ、誰もが楽しめることを目指したものが求められている」。タカラトミーの担当者は、ロングセラー商品「リカちゃん」の開発方針を、こう説明する。「玩具は『社会の縮図』」とも指摘。1967年の発売以来、子どもたちの身近な環境に合わせて変化させてきた。
昨年発売したドールハウスは、ボウリングなどの家族で楽しめる「遊び」を取り入れた。男児の購入比率も増加傾向にあるといい、「ジェンダーを含めた多様性を受け入れ、尊重するメッセージが子どもたちに自然と伝わってくれるとうれしい」と説明する。
4日に東京・新宿でスタートした「リカちゃんのON/OFF展」の会場には、オフィススタイルの服のほか、部屋着姿のリカちゃんも展示。「理想の自分でいる時間」と「現実の自分でいる時間」の「どちらも大切な自分の一部であること」をメッセージに込めたという。
会場を訪れた川崎市の50代女性は、整理整頓されていない部屋や、スーツジャケットにジャージーパンツといういでたちに「娘を見ているよう」とほほ笑んだ。
根強い人気を誇る「たまごっち」も変化を続けてきた。2023年発売の「Tamagotchi
Uni(たまごっちユニ)」は世界展開を見据えた商品で、「メリークリスマス」という表現を避け、「ハッピーホリデーズ」を使うなど特定の宗教や文化を感じさせない工夫を凝らした。ただ、開発当初から「人を傷つけたりしないような世界観はルールを作って守り続けている」(バンダイトイ事業部の岡本有莉さん)という。
◇思い込み克服、学びの場でも
「女性の校長先生を描くことを意識していた」。学習誌や幼児ドリルなどの編集に携わった学研教育総合研究所の川田夏子さんは、子ども向け雑誌でも性別役割分業の意識を助長するような表現は避けてきたと振り返る。例えば、旗を持って子どもが横断歩道を渡る手助けをする学童擁護員を示す「緑のおばさん」という呼称を避けるなど、子どもの視界に入る役割からステレオタイプを作らないよう工夫を重ねてきた。
神戸松蔭大学人間科学部の土肥伊都子教授は、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)は幼少期の環境が大きいと指摘し、性別を意識させない環境づくりが大切だと説明する。女子生徒用制服にスラックスを導入するなど、子どもの中での性差の境界線は「弱まってきている」と分析。一方、教員でも科目によって男女比に隔たりがあるなど、一部の職種ではジェンダーギャップが残るとも指摘する。
【編集後記】私は野球が好きだが、「女性なのに詳しいね」と言われると、どこか引っかかる。一方で、私も無意識のうちに誰かを「型」にはめてはいなかったか。土肥教授のアンコンシャス・バイアスへの指摘で自省した。固定観念を子どもの世界から変えていくことが、誰もが好きなものを気兼ねなく共有できる社会につながっていくのかもしれない。(時事通信経済部記者・出川耀子)。
【時事通信社】
〔写真説明〕「リカちゃんのON/OFF展」のブースの一角。左はスーツ姿、右はスーツジャケットにジャージーパンツ姿でオンライン会議に参加するリカちゃん=4日、東京都内
〔写真説明〕歴代のたまごっちが並べられたボード=2月19日、東京都台東区
〔写真説明〕国際女性デー2026
2026年03月08日 14時37分