【北京時事】中国・北京で11日に閉幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、習近平共産党総書記(国家主席)にとって、3期目(2022~27年)の任期折り返しに当たるタイミングで開かれた。中国経済が低迷し米国との対立が続く内憂外患の状況にもかかわらず、全人代は目立った議題がなく盛り上がりに欠けた感は否めない。4期目を視野に入れる習氏の「一強」体制を反映し、全人代の形骸化はますます顕著になっている。
11日の全人代閉幕式。ひな壇中央に座った習氏は余裕の表情を浮かべ、時折、代表らを見渡すそぶりを見せた。閉幕後、隣に座っていた李強首相と言葉を交わさず、別の幹部に声を掛けただけで足早に会場を後にした。
今年の政府活動報告では、経済成長率の目標を3年連続で「5%前後」に据え置いた。目標達成に向けて盛り込まれた内需拡大策や民間企業の奨励策などは、ほとんどが習氏主導の党の会議ですでに打ち出されたもので新味に欠けた。対策の規模も、深刻な不動産市場の低迷を考えれば物足りない。民間の活力を引き出す思い切った施策を予想する向きもあったが、期待外れに終わった。
また、習氏以外の高官が自らの言葉で対外発信する機会は少なくなっている。李首相が政府活動報告の多くの部分を読み飛ばすことが定着。恒例だった閉幕後の首相による記者会見も昨年から取りやめとなった。期間中、各地の全人代代表からは「党中央の集中統一指導という最高政治原則を堅持する」(江蘇省の代表)といった、党の公式見解に沿った形式的な発言が相次いだ。
国内で「一強」支配を強める一方で、習政権は周辺国などへの軍事的威圧も続けている。台湾周辺や東・南シナ海では、中国軍の活動が常態化。2月には、中国から遠く離れたオーストラリアとニュージーランドの間の国際水域で実弾射撃演習を実施した。演習の通告は直前に無線で行われ、両国の反発を招いた。
国内外で強権的な方針を維持する習政権。今後、中国への圧力を強めるトランプ米政権との対立激化も予想される。西側のある外交関係者は、国内引き締めと軍事力誇示のため、「習政権が内外で強気に出る場面が増える可能性がある」と指摘している。
【時事通信社】
〔写真説明〕11日、中国・北京の人民大会堂で全国人民代表大会(全人代)の閉幕式を終え、会場を後にする習近平共産党総書記(国家主席)(EPA時事)
2025年03月12日 12時38分