【ソウル時事】韓国の李在明政権は、トランプ米大統領が韓国からの輸入品に25%の相互関税を課すと予告した8月1日を前に、15%への引き下げで合意し、危機を回避した。造船事業での協力を含む総額3500億ドル(約52兆円)の投資を切り札に、日本や欧州連合(EU)と同じ税率を引き出し、国内では安堵(あんど)が広がる。
李大統領は31日、SNSで「大きな峠を越えた」と強調。「製造業の再建という米国の利益と米市場での韓国企業の競争力拡大というわれわれの意志が合致した結果だ」と誇った。
交渉は李政権発足から2カ月足らずの期間しかなく、「激烈だった」(韓国高官)。金正官産業通商資源相らは23日から訪米し、交渉相手のラトニック米商務長官の英スコットランド訪問を追って米国から現地入り。米韓の高官協議は約10回に及んだ。
対米投資のうち1500億ドルは造船分野に、残りは半導体や2次電池、バイオ、エネルギーなどに充てられる。特に造船分野での協力が合意に寄与。米国では造船業の衰退が深刻で、米側からは韓国の技術力に強い関心が寄せられた。
韓国経済は輸出依存度が高く、輸出額は国内総生産(GDP)の約4割に達する。米国は中国に次ぐ第2の輸出相手国で、自動車は最大の輸出品目。2024年の自動車輸出総額の49%が米国向けだった。日本やEUが自動車への15%関税で合意する中、韓国車への25%の追加関税が維持されれば、競争力を損なう恐れがあった。韓国の経済6団体は「合意を歓迎する」との声明を出した。
韓国が合意した対米投資額は、日本やEUより小さい。韓国大統領府の金容範政策室長は「日本の交渉を精密に分析した」と強調。「貿易黒字が日本より少ないため、投資規模も抑えられた」と明らかにした。
【時事通信社】
〔写真説明〕韓国大統領府で、会議に参加する李在明大統領=31日、ソウル(EPA時事)
2025年08月01日 07時23分