石破茂首相(自民党総裁)が、米国の高関税政策や自然災害への対応で、指導力のアピールに躍起だ。党内で拡大する「石破降ろし」の沈静化を図る狙いも透けるが、思惑通りの展開となるかは見通せない。
首相は31日、日米関税交渉の合意を受け、自動車業界トップらと東京都内で意見交換。「合意内容を着実に実施すべく、米国に強力に働き掛ける」と約束した。
自動車関税を巡り、日米は15%に引き下げることで合意。出席者からは「壊滅的な影響が緩和された」と政府対応を評価する声が出た。
首相は今後も業界との対話に努め、懸念を払拭したい考えだ。会合では、事業者に合意内容などを説明するため、自ら出向く意向を示した。
参院選大敗を受けた21日の記者会見で、首相は「最も大切なことは国政に停滞を招かないことだ」と述べ、続投する意向を表明。関税や自然災害への対応を理由に挙げた。
30日にロシア・カムチャツカ半島付近で大地震が発生した際は、津波対応など危機管理に万全を期すよう指示。この日だけで計2回、記者団の取材に応じるなど、自ら前面に立つ姿勢が目立った。
報道各社の世論調査では、首相の続投を容認する意見も根強い。首相周辺は「目の前の仕事をこなして世論を引きつけたい」と語った。
ただ、党内で首相の責任を問う声は尽きない。執行部は「反石破」勢力の要求を踏まえ、8月8日に両院議員総会を開くことを決めたが、混乱収束につながるかは不透明。政権の屋台骨である森山裕幹事長が、8月中の参院選総括後の辞任を示唆していることも、首相の進退に大きく影響しそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕首相官邸に入る石破茂首相=31日午前、東京・永田町
2025年08月01日 07時25分