【ワシントン、ベルリン時事】トランプ米政権が新たに発表した相互関税では、日本や欧州連合(EU)など主要貿易相手の税率は、米国との交渉の結果、4月時点よりも引き下げられた。「短期的な経済損失は対処可能(な水準)だ」(独エコノミスト)と安堵(あんど)の声も上がる。ただ、不透明感の払拭には程遠く、「トランプ関税」の影響は尾を引きそうだ。
国際通貨基金(IMF)は7月に公表した最新の世界経済見通しで、米国の関税率が米中協議などを受け、4月時点の想定の約24%から17%程度に下がったと分析。この結果、世界経済の今年の成長率を3.0%と、4月の予想から0.2ポイント引き上げた。
もっとも、グランシャIMFチーフエコノミストは「貿易ショックは恐れられていたものよりは厳しくなさそうだが、依然として大きい」と指摘。「米国との合意が守られるのか、見守る必要がある。状況はなおも流動的だ」と懸念した。
米国とEUの合意では、EUへの相互関税は30%から15%へ引き下げられた。ただ、合意後にラトニック米商務長官は米テレビで、EU側のデジタル課税や、米国が課す鉄鋼・アルミニウム輸入への関税を巡って「依然協議中だ」と明かした。トランプ氏のSNSへの投稿一つで、状況が一変する恐れも否定できない。
ドイツの有力シンクタンク、キール世界経済研究所(IfW)の国際貿易専門家、ユリアン・ヒンツ氏は「EUは米国との貿易戦争を短期的に回避しようとした。長期的には高いつけを払うことになる」と警告した。
ヒンツ氏は、EUがカナダやメキシコ、韓国などと協調し、米国の関税の脅しに対抗する「選択肢もあったはずだ」と指摘。だが、高関税などを受け入れる形で妥結した対米合意は「他国を互いに競わせるというトランプ氏の戦略を強化するものになった」との見解を示した。
【時事通信社】
2025年08月01日 20時32分
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