ロシア、なぜ領土要求=ウクライナは再侵攻を懸念



ロシアのプーチン大統領は15日にトランプ米大統領と会談した際、和平の条件としてウクライナ東部ドンバス地方の割譲を要求したとされる。同地方は帝政支配時代からロシアの労働者が集まった炭鉱地帯でロシア語使用率が高く、プーチン政権は「固有の領土」という大義を掲げて約3年半前、侵攻に踏み切った。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、割譲を受け入れたとしてもロシアの「領土的野心」はそこで収まらず、さらなる侵攻があると確信している。

プーチン政権は侵攻3日前の2022年2月21日、親ロシア派かいらい政権を通じて支配してきたドンバス地方(ドネツク、ルハンスク2州)の独立を一方的に承認。ウクライナではない「独立国」から支援要請があったという建前の下、2州全域を「解放する」と宣言し、侵攻を正当化した。

背景にあるのは、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナに拡大するのではないかというプーチン政権の強い懸念であり、ドンバス地方を獲得すること自体に戦略的利益があると考えているかは不明だ。ただ、対内的には「NATOへの恐れ」よりも、ロシア語を使う同胞を助ける「祖国解放」の方が聞こえが良い。

14年、ウクライナ南部クリミア半島に侵攻して「無血開城」させたプーチン政権は、直後にドンバス地方に手を伸ばしていた。ところが、ウクライナの徹底抗戦を受け、15年の停戦合意時の親ロシア派支配地域は2州全域どころか一部にとどまった。22年に首都キーウ制圧に失敗し、侵攻が長期化した今、最低限でもドンバス地方を獲得しなければ、矛先を収める理由となる「勝利」を自国民に誇れない。

プーチン政権の突き付ける要求はウクライナの「非武装化」「中立化」など多岐にわたっており、到底のめない内容が含まれている。ゼレンスキー氏は最近、「2度あることは3度ある」と発言。ロシアと和平合意を結んでも、同地方が新たな侵攻の足掛かりとなり、14年や22年のような軍事力行使が繰り返されかねないと危機感を示す。

【時事通信社】 〔写真説明〕砲撃を受けて燃える家屋=2022年4月、ウクライナ東部ドンバス地方(AFP時事)

2025年08月19日 18時03分


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