13日閉幕の大阪・関西万博には、国内開催で最多の158カ国・地域が参加した。本国から持ち込まれた芸術品や体験型の展示は「本物を味わえる」と話題に。2005年の愛知万博以来、大規模万博としては20年ぶりに日本での開催となる中、出展を通じて友好関係をアピールする海外パビリオンもあり、来場者を魅了した。
◇芸術、未来社会でも
最も注目を集めたパビリオンの一つがイタリア館だ。古代ローマ時代に制作された大理石の彫刻「ファルネーゼのアトラス」など、日本で初公開となる芸術作品を次々に展示。SNSを中心に話題を集め、同国担当者によると、入場の待ち時間は最大で7時間に達した。
同館のマリオ・バッターニ政府代表は「未来社会でも重要になるのは人間のアイデア。それを生むために必要なのが『リアル』のアートだ」と強調し、多くの人が訪れたことを踏まえ「成功だった」と振り返った。
アメリカ館では、1970年大阪万博の目玉となった「月の石」を再び公開。今回は72年にアポロ17号が採取した石を展示した。日本館でも世界最大級の「火星の石」を目玉とするなど、宇宙からの「現物」展示が話題を呼んだ。
◇「危ない」イメージ払拭
中東のヨルダン館では、本国から運び入れた22トンの砂をパビリオンの一角に敷き詰め、「砂漠」を再現。来場者がはだしで歩くことができる体験型の展示が好評で、チケット販売大手ぴあの満足度ランキングで1位に輝いた。
構想段階から日本文化を「深く研究した」というシファ・ズグール政府代表代行は「『危ない国だ』などの間違ったイメージを持たれている」と日本人の同国への印象を分析。「砂を体感し、本当のヨルダンを感じてもらいたかった。日本人の心に伝わり、感謝でいっぱいだ」と笑顔を見せた。
◇日本とのつながり意識も
前回のドバイ万博で日本館の企画に携わった大阪公立大の橋爪紳也特別教授は、今回の万博の特徴の一つとして、各国が開催国日本とのつながりを意識した展示が随所に見られた点を挙げる。
フランス館は、運命の人と赤い糸で結ばれているという日本の「赤い糸」伝説を題材として構想。イタリア館では、天正遣欧少年使節の一人としてローマ法王に謁見(えっけん)した伊東マンショの肖像画を飾るなど、展示を通じて日本との友好関係を表現した。橋爪氏は「世界の国々のパビリオンにはそれぞれのメッセージが込められ、日本という国をどのように捉えているのかを示していた」と語る。
【時事通信社】
〔写真説明〕大阪・関西万博のイタリア館に展示されている彫刻「ファルネーゼのアトラス」=10日、大阪市此花区
〔写真説明〕米国パビリオンの「月の石」=4月9日、大阪市此花区
〔写真説明〕インタビューに答えるヨルダンの政府代表代行シファ・ズグール氏=3日、大阪市此花区
〔写真説明〕ヨルダンパビリオンの砂の上に座る政府代表代行シファ・ズグール氏=3日、大阪市此花区
2025年10月13日 12時46分