対ASEAN、関係強化へ=中国念頭、自国優先に不安―トランプ米大統領



【クアラルンプール時事】トランプ米大統領は26日、アジア歴訪の最初の地マレーシアを訪れ、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議などに出席した。対立が先鋭化する中国との競争を念頭にASEAN諸国との関係強化を表明。だが、関税を武器に「米国第一」の外交を展開するトランプ氏の姿勢には不安も残る。

「自由で開かれ、繁栄するインド太平洋のために取り組む。米国は100%共にあるというのがメッセージだ」。トランプ氏はASEAN首脳に向かってこう述べ、関係強化に意欲を示した。

会議に先立ち同席したタイとカンボジアの和平合意調印式では「対立の解決を支援し、各国が繁栄する未来を築くことができたことを誇りに思う」と強調。米国の仲介で和平を実現したと自身の手柄をアピールした。

「戻って来られてとても光栄だ」と語るトランプ氏だが、ASEAN関連会合に出席したのは1期目の2017年以来8年ぶり。シンガポールやベトナムに足を運んだこともあるが、いずれも米朝首脳会談が目的で、トランプ氏の東南アジアへの関与姿勢には疑念が付きまとう。

米国の姿勢が定まらないのはASEAN側の事情もある。フィリピンやタイといった米国の同盟国がある一方、カンボジアやラオスは中国に近い。第1次トランプ政権で大統領次席補佐官を務めたアレキサンダー・グレイ氏は「多様な外交政策を持つ」という対ASEAN外交の難しさを指摘する。

だが、人口増加に伴い、市場の成長が見込めるASEANは中国との競争の主戦場だ。南シナ海で海洋進出を強める中国との最前線に立つのもベトナムやフィリピン、マレーシアといった国々で、グレイ氏は「トランプ氏も、中国が主権を損なう取り組みをしているのを理解している」と強調する。

トランプ氏は滞在中、一部のASEAN加盟国との貿易合意を次々と発表したが、こうした国々は高関税を掲げて交渉を迫るトランプ政権の強引な手法に押し切られたとの見方も多い。「何世代にもわたり友人であり続ける」と語るトランプ氏だが、その言葉の真剣度が問われるのはこれからだ。

【時事通信社】 〔写真説明〕東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳との写真撮影に臨むトランプ米大統領(左から5人目)(ロイター時事)

2025年10月27日 08時22分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース