「動機解明を」「事件教訓に」=宗教2世、山上被告の発言に注目―虐待防止へ法整備求める声も



安倍晋三元首相銃撃事件を巡っては、殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)が「母が入信し、恨みがあった」などと供述したことで、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金問題に注目が集まった。被害に苦しんできた宗教2世らは28日の初公判を前に「動機の解明を」「事件を教訓にして」などと胸の内を明かした。

宗教2世で元信者の50代女性は、被害が放置されてこなければ事件は起きなかったと考えている。「再発防止策につなげるためにも、動機を解明し、問題を社会全体で受け止めるべきだ」と訴える。

女性は公判での被告の発言に注目しているという。「被告は一線を越えた。法廷での言葉から伝わってくる感情が、私が感じてきた教団への絶望感や憎しみと同じものなのかが気になる」と話す。

東京都内に住む2世の30代男性は、教団が名付けた本名ではなく、「野浪行彦」を名乗って生活している。両親から暴力を受け、断食祈祷(きとう)などを強いられたという。

「自分の苦しみは誰も分かってくれないと思い(海外に)逃げたが、同じ境遇の人が何人もいた。その現実と向き合うべきだった」と振り返る。裁判は来年1月に判決が言い渡される予定だが、「判決と同時に、教団による被害も忘れられないか心配だ。他人ごとではなく、日本社会の問題として捉えて」と語った。

両親が少なくとも数千万円を献金したという2世の女性は「自分の目的を達成するため、殺人を犯すのは非難に値する。被告は裁かれるべきだ」と断言。一方、「社会が救済措置をしていないことは別の話だ」と指摘した。

「教団は経済的にも精神的にも信者を追い詰める。事件を教訓に、救済すべきところを見逃さないで」と求めた女性。2世への「宗教虐待」について、厚生労働省は事件後、自治体向けの通知を出し、適切な対応を取るよう促したが、「対策は不十分だ。被害実態を精査し法整備をする必要がある」と語った。

【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える野浪行彦さん=7日、東京都中央区

2025年10月28日 21時02分


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