「心からの謝罪聞きたい」=息子ら不明の男性―知床観光船、12日初公判



北海道・知床半島沖で2022年4月に起きた観光船「KAZU

I(カズワン)」の沈没事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社社長、桂田精一被告(62)の公判が12日から釧路地裁で始まる。元妻=当時(42)=と一人息子=同(7)=が行方不明となっている道内の男性(53)が取材に応じ、「心からの謝罪の言葉が聞きたい」と心境を語った。

事故当日、男性は乗船する直前の2人とメッセージをやりとりしていた。旅行を楽しんでいるのかなと思っていたところ、夕方になって観光船が行方不明になったと報道で知った。「まさか」との思いで、出港したウトロ漁港(斜里町)まで車を走らせた。「着く頃には見つかっていてほしい」との気持ちとは裏腹に、乗船者名簿に2人の名前を見つけた。

事故から3年半が過ぎた現在も、自宅には息子が愛用していた品々が並んでいる。大好きだった鉄道模型などが積まれた学習机を眺めながら、「生存の可能性が低いということも分かっているが、無事に帰って来た2人に『お帰り』と言ってあげたい」と悲痛な思いを吐露した。

公判では、悪天候になるとの予報が出ていたのに出港を中止しなかった被告の過失が認められるかが最大の争点となる。男性は「船を出さなければ防げた事故だった。利益を優先して、安全面をおろそかにした結果だ」と語気を強めた。

無罪を主張する方針の桂田被告に対し、男性は「これだけ大きな事故にもかかわらず、何の責任も取っていない」と憤る。公判では被害者の一人として意見陳述する予定で、これまでの気持ちを被告にぶつけるつもりだ。「どうして無罪を主張できるのか。自分は悪くないと言えるのか。人命を軽視していたことを認めてほしい」。

【時事通信社】 〔写真説明〕行方不明となっている息子の学習机を見詰める男性=6日、北海道

2025年11月11日 07時05分


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