桂田社長側が無罪主張=「罪の成立、分からない」―知床観光船事故初公判・釧路地裁



北海道・知床半島沖で2022年4月、観光船「KAZU

I(カズワン)」が沈没して乗客乗員20人が死亡、6人が行方不明となった事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」(斜里町)社長、桂田精一被告(62)の初公判が12日、釧路地裁(水越壮夫裁判長)で開かれた。

罪状認否で桂田被告は遺族らに謝罪した上で、「船長に『天候が荒れる前に引き返す』と言われ、それなら大丈夫と出航を決めた。起訴状に書かれた罪が成立するかは分からない」と述べた。弁護側は、事故は予見できなかったなどとして無罪を主張した。

海難事故を巡り、操船に関与していない経営者の刑事責任が問われるのは異例。全12回にわたる公判では、悪天候が予想された中での事故の予見可能性や、出航判断の是非が最大の争点となる。判決は来年6月17日の予定。

検察側は冒頭陳述で、事故の予見可能性について「航行中に予想される気象が運航基準を超え、死傷事故が発生する恐れを認識できれば認められる」と主張。強風などの注意報が出ていたのに、被告が中止を指示しなかったため事故に至ったと訴えた。

また、桂田被告が運航管理者となった21年のシーズン中、被告が事務所で船からの定点連絡を受ける業務にほとんど従事していなかったことに言及。事故当日も不在だった上、無線機のアンテナが壊れるなどしており、「事業運営全般がずさんだった」とした。

これに対し弁護側は、沈没原因とされる船首甲板部ハッチが閉まらない不具合について、国の検査代行機関が見過ごしていたなどと指摘。被告はこれを認識しておらず、不具合がなければ帰港できたと訴えた。

また、悪天候で引き返す「条件付き運航」は事故で死亡した船長の判断で、同業者でも運用されていたと主張。被告は午前中のうちに帰港するルートだと認識していたが、船長が独断でコースを決定したなどとした。

【時事通信社】 〔写真説明〕初公判を終え、釧路地裁を出る「知床遊覧船」社長の桂田精一被告=12日午後、北海道釧路市 〔写真説明〕知床観光船事故の初公判が行われた釧路地裁の法廷=12日午前、北海道釧路市(代表撮影)

2025年11月12日 18時28分


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