
台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁を機に、日中間の緊張が高まる中、政府・与党の対中パイプの細さを指摘する声が出ている。中国との橋渡し役を自任してきた公明党が連立政権から離脱。自民党でも長らく議員外交を主導した二階俊博元幹事長らが政界を引退し、後を受け継ぐ有力者が見当たらないためだ。
「懸案や意見の相違があるからこそ、官民双方で重層的な意思疎通を図ることが重要だ」。茂木敏充外相は18日の記者会見でこう強調。その言葉とは裏腹に、日中間では厳しい応酬が続くなど、歩み寄りの機運は乏しい。
公明は、1964年の結党大会でまとめた活動方針に中国との国交正常化の推進を盛り込むなど、関係構築の長い歴史を誇る。中国側も、公明を正常化の「井戸を掘った人」と厚遇してきた。
党関係者は「自民が立場上、中国に言いにくいことを、公明が伝える。役割分担で外交を円滑に回すことができた」と振り返る。
高市氏が師と仰ぐ故安倍晋三元首相は親台派として知られたが、在任中は中国に豊富な人脈を持つ二階氏を幹事長や総務会長に起用した。二階氏は2015年や17年、19年の訪中時、安倍氏の特使として習近平国家主席と会談。「親書」を手渡すなど両首脳の仲を取り持った。
一方、高市政権では首相や木原稔官房長官をはじめ、中国より台湾に近い顔触れが目立つ。超党派の日中友好議員連盟の会長を務める森山裕前幹事長は政権と距離がある。
公明に代わって与党入りした日本維新の会も保守色が強く、中国とのつながりは薄い。
日中両外務省による18日の局長協議も平行線に終わった。両国関係の現状を憂う声は、与野党を問わない。
自民中堅は「二階氏が現役であれば違っただろう。中国を訪れて打開することができたかもしれない」と指摘。公明若手は「自民と維新の連立になってブレーキ役がいない。外交に幅がなくなった」と嘆いた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は18日の会見で「関係が厳しい時こそ、コミュニケーションのルートだけはしっかり持っておくことが大切だ」と訴えた。
【時事通信社】
〔写真説明〕首相官邸に入る高市早苗首相=18日午前、東京・永田町
〔写真説明〕中国の習近平国家主席(右)と握手する自民党の二階俊博幹事長=2017年12月、北京
2025年11月19日 07時01分