死者159人、防火・避難に不備=問われる安全管理と監督責任―高層住宅火災から1週間・香港



【香港時事】香港北部・新界地区大埔の高層住宅火災は3日、発生から1週間が経過した。延焼を唯一免れた1棟の住民がこの日、初めて一時帰宅を許されて貴重品などを持ち出した。これまでに159人の死亡が確認されたが、依然として住民ら31人と連絡が取れておらず、犠牲者はさらに増える恐れがある。防火対策や避難態勢の不備が大惨事につながった可能性が高く、施工業者のずさんな安全管理や当局の監督責任が問われそうだ。

火災は11月26日午後、約2000戸に4000人以上が暮らす高層住宅群で発生。30階を超える8棟のうち7棟が燃えた。現場では昨年7月から外壁の補修工事が行われており、8棟全てに竹製の足場が設置され、建物全体を覆うように防護ネットが張られていた。

火元はうち1棟の低層階のネット付近。何らかの火種が窓ガラスを保護するために取り付けられていた発泡スチロールに引火し、熱で窓ガラスが割れて外気が屋内に入り、火勢が急速に強まったとみられる。上層階から落下した足場が入り口をふさぐなどしたため、消火・救助活動は難航した。

地元当局によると、防火基準を満たしていない防護ネットが一部で使用されていた。政府高官は「業者がずる賢い手段で検査を逃れ、わずかな利益のために多くの人命を奪った」と非難している。一部住民は火災前にネットなどの資材の安全性について当局にただしていたが、適切な対応は取られなかったという。

消防当局が火災前に8棟全ての火災報知器を点検したが、正常に作動していなかったことも判明。報知器が鳴らなかったため、多くの住民の避難が遅れたとみられる。現場の作業員が、足場で喫煙していたとの苦情が多くの住民から寄せられていたとの報道もある。

警察当局はこれまでに、工事を担当した会社の幹部ら10人以上を過失致死容疑で逮捕。早急な逮捕の裏には、業者の不正に目を向けさせ、当局批判を回避したい思惑も透けて見える。

【時事通信社】 〔写真説明〕3日、香港北部・新界地区大埔で、高層住宅火災の延焼を免れた1棟から貴重品などを持ち出す住民(ロイター時事) 〔写真説明〕炎と煙に包まれる香港北部・大埔の高層住宅=11月26日(AFP時事)

2025年12月03日 20時31分


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