ミャンマー軍政、支援見返りに投票促す=避難民らにも圧力―総選挙まで1週間



【バンコク時事】ミャンマー軍事政権が主導し、28日に始まる総選挙まで1週間。民主派の主要政党が事実上排除される中、軍政は投票率を上げるため市民への圧力を強めている。独立系メディアによると、軍関係者らは北部ザガイン地域の国内避難民に支援を打ち切ると脅し、期日前投票を強制しているという。

総選挙は上下両院(定数計664)のうち、軍人に割り当てられる166議席を除いた498議席が改選されるが、投票が実施されない選挙区もある。投票は来年1月にかけて3回実施。軍政は選挙を通して「民政移管」を内外にアピールする狙いだが、2020年の前回選挙で大勝した民主化指導者アウンサンスーチー氏(拘束中)率いる国民民主連盟(NLD)は23年に解党されている。

国営紙によると、国軍トップのミンアウンフライン総司令官は15日、西部ラカイン州での記念式典に合わせて送ったメッセージで、総選挙について「関係法令に基づき、透明性をもって(期日前投票が)始まった」と強調。「すべての有権者が積極的に参加すれば、国民が切望する多党制による民主体制が円滑かつ効果的に進展する」と投票を促した。

ただ、その実態は社会への締め付け強化と受け取られている。軍政が避難民に支援の見返りとして投票を迫るやり方は、中部マンダレーでも確認。AFP通信は、投票への批判や抗議を禁止する選挙保護法により、計229人が選挙プロセスの妨害で起訴される見通しと伝えた。

政策研究大学院大学の工藤年博教授(東南アジア地域研究)は「(一連の締め付けは)投票率を高めるためのミンアウンフライン氏への忖度(そんたく)ではないか。総選挙は投票率勝負という面もある」と分析。市民参加を高めることで軍政が正統性を勝ち取ろうとしているとの見方を示した。

一方、国軍は反政府組織の支配地域への空爆を続行。現地メディアは、ラカイン州にある病院を10日に国軍が空爆し、30人以上が死亡したと報じた。12月に入り、ザガイン地域でも空爆を実施した。戦闘地域では投票は行われない。

【時事通信社】 〔写真説明〕ミャンマー総選挙の候補者らの掲示板=9日、中部マンダレー近郊(AFP時事)

2025年12月21日 07時09分


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