米中接近、流れ加速へ=トランプ氏、中間選挙にらみ実利優先―「ディール外交」に警鐘も



【ワシントン時事】国際情勢を揺るがす米中関係は2026年、緊張緩和と対立を繰り返しつつ、安定化に向けて着地点を模索する動きが続きそうだ。トランプ米大統領は2期目後半の「レームダック(死に体)」化を左右する同11月の中間選挙を念頭に、対中交渉で「実利」を目指す構え。中国の習近平国家主席に足元を見透かされるとの懸念は根強い。

◇対立から手打ち

第2次政権発足後、トランプ氏は関税を武器に貿易不均衡の是正を各国に迫った。しかし、中国政府が兵器製造に不可欠なレアアース(希土類)の輸出規制強化を打ち出すと、輸入の約70%を中国に頼る米側は矛を収めざるを得ない状況に追い込まれた。

「手ごわい交渉相手だ」。トランプ氏は25年10月末、韓国・釜山で約6年ぶりに習氏と対面すると、固い握手を交わして「手打ち」を演出した。米国に安全保障を頼り、対米投資の増額で関税引き下げを目指した日本などの同盟国と異なり、報復措置で対抗した習氏の強気な姿勢にトランプ氏は譲歩を余儀なくされた。

トランプ氏は翌11月の電話会談で、26年4月の訪中で習氏と合意。実現すれば訪中は約9年ぶりだ。ベセント財務長官は同年中に計4回の対面での首脳会談を行う可能性に触れており、トランプ氏は対中接近へと確実にかじを切っている。

◇日中対立と距離

26年11月の中間選挙では、共和党の有力基盤である農村部の票の出方が結果を左右する可能性がある。トランプ氏は過去の会談で習氏に「選挙での農家の重要性」(ボルトン元大統領補佐官)を説いた経緯があり、対面会談を重ね、習氏が合意した米国産大豆購入の着実な履行を迫るとみられる。

一方、実利を優先するトランプ氏は台湾問題や、台湾有事を巡る高市早苗首相の答弁を受けた日中対立とは距離を置く。中国軍の台湾侵攻の可能性を問われても「(中国側は)トランプ大統領の間は決して何もしないと言っている」と指摘して意に介さず、軍事介入の意向を明言しない「曖昧戦略」を維持。習政権に刺激を与える発言を避けている。

中国には米国との長期的な競争を見据え、米主導の同盟網にくさびを打ち込み、自国の影響力を高める戦略がある。米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ政策研究所」のザック・クーパー上級研究員は、トランプ氏の「ディール(取引)外交」は「中国に長期的な利益を譲り渡し、短期的な利益を得ているにすぎない」と警鐘を鳴らしている。

【時事通信社】 〔写真説明〕中国の習近平国家主席(右)と握手するトランプ米大統領=10月30日、韓国・釜山(AFP時事)

2025年12月31日 07時15分


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