
【カイロ時事】エジプトと境界を接するパレスチナ自治区ガザ最南部ラファの検問所で、今月2日から人の往来が再開した。ただ、一応の停戦が維持されているとはいえ、イスラエル軍の攻撃で荒廃したガザの復興の道のりは険しい。エジプトで避難生活を送るガザ出身のパレスチナ人男性が取材に応じ、「現在のガザでは、戻りたくても戻れない」と心中を語った。
この男性は、ガザの中心都市ガザ市出身のアリ・ジャファルさん(42)。イスラエル軍の大規模軍事作戦が始まった2カ月後の2023年12月、子供2人を含む親族9人でガザを脱出。母親がエジプト人のため、エジプトへの越境を認められたという。現在はカイロ近郊で歯科医院の事務員として働き、家族を養っている。
ジャファルさんは放射線技師で、ガザでは複数の病院を掛け持ちした。仕事でためた資金でアパート建設を進めていたが、戦火ですべて水の泡。エジプト生活1年目はひどく落ち込んで何も手につかなかった。今も心が晴れず「海に漂流しているかのようだ」と話す。
検問所が再開され、ガザ側の検問所当局者によれば、帰還を希望する避難民も多い。しかし、ジャファルさんは消極的だ。ガザではイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦が昨年10月に発効したが、「合意違反」を主張するイスラエルは攻撃を繰り返し、停戦以降これまでに580人以上の死者が出た。安全が約束されない上、経済や医療、教育も立て直しが進まず、「ガザでは人間の営みが約束されていない」と判断しているからだ。
現在4歳の「おしゃべりだった」娘は、ガザで繰り返し経験した爆撃と避難生活のトラウマで発語がたどたどしくなった。エジプトの保育園に通い、ようやく心がほどけてきたところだ。「子供に苦しい生活を強いることはできない」。
ただ、将来ガザで「国際的な承認を得たパレスチナ人による統治」が実現すれば、現地で復興の一翼を担いたいという思いもある。「生まれ育ったガザを忘れることはできない」ものの、未来が見通せない今は、希望と絶望の間で「心が揺れている」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザからエジプトに避難したアリ・ジャファルさん=4日、カイロ近郊ギザ
2026年02月11日 19時23分