
「買う側」への罰則がなく、「不均等」とも評される日本の売買春を巡る法規制。法務省は2月、規制の在り方について有識者を交えた検討会の設置を発表した。識者らは歓迎する一方、「売る側」の非処罰化など、議論をさらに進める重要性を主張。性売買の根絶を目指す「北欧モデル」の導入を求める声も上がっている。
1957年施行の売春防止法は、不特定多数を相手とした金銭を介する性交を「人としての尊厳を害する」行為と規定。これを禁止するが、処罰対象は「売る側」の勧誘行為などに限られる。そして「抜け穴」的に並立するのが風営法だ。同法は、ファッションヘルスなど性交類似行為を提供する風俗営業を届け出させるもので、警察庁によると、派遣型風俗店だけで2万軒以上が認められている。
ジェンダー法学に詳しい大阪電気通信大学の中里見博教授は「この独特な法制度によって、日本では大々的に性売買が行われるようになった」と指摘する。
東京都新宿区の大久保公園周辺での客待ち行為などがクローズアップされ、売春防止法改正の機運が高まる中、女性支援団体「Colabo(コラボ)」の仁藤夢乃代表は議論をさらに深め、性売買を暴力と捉えて根絶を目指す「北欧モデル」導入を訴える。「売る側」を被害者として保護し、「買う側」を加害者として処罰する法制度だ。
仁藤氏は、日本の性売買の現場は暴力や強要の温床になっていると説明。「お金を払えば他人の体を買える社会の暴力性について、私たちはいま一度考える必要がある」と強調する。
一方で、「買う側」の処罰化は、性売買に従事する人の収入減少につながったり、売春の地下化により従事者がかえって危険にさらされたりするとして、反対する声もある。
中里見氏によると、先進国の規制は大きく二つの潮流に分かれる。北欧モデルと、一定の規制を設けて「売る側」の健康・安全確保に主眼を置く非犯罪・合法化モデルだ。スウェーデンやノルウェー、フランスは前者、オランダやドイツ、オーストラリアは後者を導入した。
それぞれの国では、性売買に対する行動に差が認められる。99年に世界で初めて「買う側」を処罰対象にしたスウェーデンと、2002年に合法化に踏み切ったドイツの比較調査(23年実施)では、男性で「性的サービスを『購入』したことがある」と回答したのはドイツで4人に1人だったのに対し、スウェーデンは1割に満たなかった。
フランスでの立法を主導した元国会議員のモード・オリビエさんは「買う人がいるから、売る人がいる」と断言。その上で、性売買を受容する社会からの脱却が、男女平等を目指す上でも重要だと訴えた。
【編集後記】「日本の性産業はどうしてあんなに大きいの?」。海外の友人に尋ねられたことがあった。正確な知識がなく、どう答えたらいいのか分からなかった。取材を進めて分かったのは、性売買を巡る問題は複雑で、各国はいまだ規制の在り方を模索しているということだ。日本では今後どのような議論が展開されるのか、引き続き注視したい。(時事通信外信部記者・巽音)。
【時事通信社】
〔写真説明〕取材に応じる女性支援団体「Colabo(コラボ)」の仁藤夢乃代表=2月21日、東京都新宿区
〔写真説明〕フランスの元国会議員モード・オリビエさん=2025年11月、東京都千代田区
2026年03月06日 07時01分