心動かす経験、キャリア開拓の糧に=船上に活躍の場求め―最初の1棟、自信に・国際女性デー



男性が多い海運や建設の現場で活躍の場を広げる女性が増えている。国の調査では、2020年時点でこれらの分野の女性就業比率は2割未満と、全産業が4割を超える中で極めて低い水準。そのような中でも、心を動かされる経験を糧にキャリアを切り開いてきた女性たちに話を聞いた。

◇初の女性船長

「入社前は船に乗れるチャンスを探し、ずっと就職活動していたようなもの」と話すのは、23年に国内総合海運会社で初めて女性船長として乗船した商船三井の松下尚美さん。さまざまな国籍のクルーが船上で生き生きと働く光景に憧れ、00年に東京商船大(現東京海洋大)を卒業。大型船の船長などに必要な海技士の資格も取得したが、当時、外航船の船員は女性にとって狭き門。内航船の運航会社などで経験を重ねて機会を探り、06年に商船三井へ中途入社した。

商船三井では女性船員は2人目だったが、「船に乗るプロという意味では(女性も男性も)一緒」と話し、仕事ぶりで信頼を積み上げた。2人の子育てでは、機関長の夫と乗船期間をずらすなど会社も配慮。自らの乗船中は母親が保育園に送迎してくれ、「一人で成し遂げたことではない」とも強調する。

船長になれた原動力は「キャリアを築いて自分で生きていく基盤をつくるべきだ」と背中を押してくれた母の存在。4月には女性で初めて、船員政策を統括する部門のトップに就く。女性船員には「一人ではないと思えるよう、横のつながりを持てる機会を増やしたい」と語る。

商船三井は船員候補生の女性比率を、35年までに現在の7%超から35%に高める目標を掲げる。船上の職場環境は大きく変わりつつある。

◇現場の利益創出に貢献

社会基盤を支える大規模な物づくりに興味があったという鹿島の技術系社員、百合恭子さんは現在、泉岳寺駅(東京都港区)周辺の再開発事業で、協力会社へ工事の発注を行う工務主任として奔走している。現場で積んだ経験を支えに工事のコストを管理する。

16年春に入社し、1カ月後に配属された福島市の病院新築工事で付属棟の施工を更地の状態から任され、安全で効率的に動ける環境づくりを心掛けた。「病院本体よりは小さいけれど建物を完成させた」という経験が自信を育て、現在は「現場の利益創出に貢献する人材になれるようキャリアを積みたい」と話す。

女性総合職の新卒採用開始から約10年後の入社で、手本となる先輩は少ない。育児との両立に焦りもあるが、目前の仕事に向き合う姿勢を大事にする。2月下旬、若手女性社員向け研修会に登壇し、「諦めずに取り組めば道が開ける」と語り掛けた。新卒女性総合職の採用は3割に近づいている。

【編集後記】「女性初」という肩書に目が向きがちだが、松下さんにとっては通過点の一つだろう。「船の上で得られる達成感は絶対に忘れない」と語る姿が印象深い。松下さんを支え、変革に挑む商船三井の姿勢もまた、その歩みを後押ししてきたのだと感じた。(時事通信経済部記者・高島萌々)

女性登用にまつわる指標ではなく、一人ひとりの声を聞きたいと取材を始めた。福島市の工事でやりがいを感じた百合さんだが、当時現場で女性社員は「珍し過ぎる存在」だったそうで、職人との意思疎通に心を配った。これまでの現場に残してきた見えない足跡に思いをはせたい。(同・角田彩乃)。

【時事通信社】 〔写真説明〕商船三井の松下尚美さん(同社提供) 〔写真説明〕国際女性デー2026 〔写真説明〕鹿島の技術系社員、百合恭子さん=2月20日、東京都港区 〔写真説明〕インタビューに答える鹿島の百合恭子さん=2月20日、東京都港区 〔写真説明〕若手女性社員の研修で質問に答える鹿島の百合恭子さん(中央)=2月20日、東京都港区

2026年03月07日 14時35分


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