
【ワシントン時事】米中間選挙を前に軽油価格を落ち着かせたいトランプ大統領が、ロシアの製油施設攻撃を続けるウクライナのゼレンスキー大統領の退陣が望ましいとの見解を示した。ゼレンスキー氏はこれに先立ち、ロシア産軽油輸入のため米国が対ロ制裁を緩和したことを非難。両首脳間の不信が募れば、ロシアのウクライナ侵攻終結の機運は一段と遠のきかねない。
「米国民、とりわけ農家、牧場主、トラック運転手のために価格を引き下げることが最優先課題だ」。トランプ氏は9日、軽油供給でロシアのプーチン大統領と合意したと発表したSNS投稿で、国内対策が主目的であることを隠さなかった。
米政府は、軽油の需給逼迫(ひっぱく)につながるロシアの製油施設攻撃を控えるようウクライナに求めてきたとされる。農業機械や輸送用トラックの燃料を軽油に頼る米国の農畜産業に影響が出ており、与党共和党の地盤である農業州で不満が高まっていたためだ。
有力エネルギー投資会社「ピカリング・エネルギー・パートナーズ」の投資責任者ダン・ピカリング氏はSNSで、合意について「何より政治的意味合いが強い」と指摘。専門家からは、製油能力の低下に苦しむロシアの供給余力や、価格引き下げ効果を疑問視する声が上がっている。
一方、ゼレンスキー氏は、9月に対ロシア制裁法に署名したばかりのトランプ氏がわずか1カ月で政策を転換し、一方的に圧力緩和に踏み切ったことに、「不公平で不誠実」と反発した。ウクライナ東部では8日、ロシア軍の爆撃で路線バスが被害を受け、30人以上が死亡。10日には南部でアパートが攻撃され、20人が犠牲になった。ロシアは空爆を強めている。
トランプ氏とプーチン氏が9日に電話で軽油供給について話し合っていた時、米フロリダ州マイアミでは、紛争終結に向けた米欧とウクライナの協議が行われていた。ゼレンスキー氏は、この協議が米ロ交渉の「隠れみの」に利用されたと批判。10日に予定されていた2日目の協議は実施されなかったと伝えられており、和平交渉の先行きにも不透明感が強まっている。
【時事通信社】
〔写真説明〕ロシアのプーチン大統領(左)とトランプ米大統領=2025年8月、アラスカ州アンカレジ(AFP時事)
〔写真説明〕10日、ウクライナ南部ザポリージャで、ロシアによる住宅地攻撃の現場で活動する救助隊員(EPA時事)
2026年10月12日 07時15分