
企業のM&A(合併・買収)が活発化する中、TOB(株式公開買い付け)などでの価格偏重の買収提案を是正する動きが出てきた。経済産業省は2023年に策定した「企業買収における行動指針」を巡る議論を再開。その趣旨について正しい理解を広めるための補足文書の作成を検討している。「価格ありき」の買収合戦に一石を投じる可能性がある。
指針自体に法的拘束力はないが、買収提案を受けた取締役会の対応を示しており、特別委員会の設置など企業の実務面で大きな影響を及ぼしている。指針は買収提案の評価基準として「企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、または向上させるか」と明記。経産省は文言が独り歩きし、高い買収価格のみが「望ましい」と誤解されているとして、補足文書や説明資料の作成を進める。
「真摯(しんし)な買収提案」は検討しなければならないとする指針の公表後、「同意なき買収」や対抗提案は増加傾向だ。昨年も芝浦電子に買収提案した台湾電子部品大手ヤゲオと、友好的な買収者として名乗りを上げたミネベアミツミが激しく競り合った。
ニデックが牧野フライス製作所に仕掛けた同意なき買収では、TOB価格を1万1000円に設定。「(牧野株の)過去最高値は9600円で、上場以来、株価がTOB価格を上回ったことがない」などと強調し、「指針の『望ましい買収』に該当する」と主張した。
一方、牧野側はニデックに買収された企業の離職率などを示すよう求めたが、企業価値の向上に資するか判断するための明確な回答は得られなかったという。牧野の買収対抗策を立案し、指針策定にも携わった西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士は「『とにかく価格が高ければそれでいい』と指針を誤読するケースも目立つが、(指針の)本意ではない」と話す。
太田氏は「株主が価格を重視するのは当然だが、全体がそれに流され過ぎている」と分析。「価格が良くても、買収後に事業が先細ってしまうような提案では企業の価値向上には資さない」と指摘した。
〔写真説明〕取材に応じる西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士=12日、東京都千代田区
2026年03月27日 07時03分