
【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)の新議長に就任したケビン・ウォーシュ氏は、改革姿勢を前面に出し、その一環としてインフレ指標の見直しを唱えている。トランプ大統領が望む利下げも視野に入れ金融政策の調整を進めやすくする構えだが、原油高で高インフレが続く中、拙速な政策変更は一段の物価高を助長しかねない。「利下げ」を示唆する発言は封印しており、当面は様子見姿勢を取らざるを得ない可能性がある。
インフレ率2%の達成を目指すFRBは、変動の激しい食料品とエネルギーを除いた物価指数を重視するが、ウォーシュ氏は「(データは)不完全だ」と批判する。物価の実態把握には「新たなインフレ枠組み」が必要だと提唱。現行指標よりも低めに出る傾向にあるデータ採用を念頭に置いており、市場には「利下げを正当化するものだ」と勘繰る向きもある。
ただ、米イスラエルとイランの紛争に伴う原油高を背景に、足元の米インフレ率は3%を超え、市場では年内の利上げ観測が強まりつつある。ウォーシュ氏は宣誓式では改革推進を訴えたものの、利下げを連想させる発言はなかった。
ウォーシュ氏はFRBの保有資産の縮小にも意欲を見せる。2006年に史上最年少の35歳で理事に就いた同氏は、リーマン・ショックへの危機対応として、米国債購入を通じて市場に資金供給する「量的緩和」に当初賛同したが、インフレ懸念を抱き懐疑的な立場に転じた。11年に理事を辞任して以降、資産規模を減らせばインフレ圧力が和らぎ、利下げが可能になると発信を続けた。
トランプ氏の利下げ圧力や、FRB本部改修工事費の膨張に絡む当局によるパウエル前議長への刑事捜査が響き、金融政策の独立性は危機的状況。ウォーシュ氏は独立性確保に尽力すると誓うが、トランプ氏との距離感から「操り人形」(野党民主党)との疑念も残る。
原油高を受け、FRBは金融緩和に慎重な路線に傾斜しつつある。利下げに前向きなウォラー理事でさえ「利下げと利上げの確率を同じ程度にすべきだ」と訴える。ウォーシュ氏が自説を強硬に主張すれば、FRBの合意形成は困難に陥る。
〔写真説明〕22日、米ワシントンでの宣誓式でトランプ大統領と話す連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ新議長(左)(EPA時事)
2026年05月23日 20時31分