
きゅうりが実り、生い茂ったハーブが風に揺れる。東京都内にあるホテルの屋上菜園では、宿泊客が置き忘れたり捨てていったりしたスーツケースで作られたプランターが活躍している。
JR水道橋駅近くの「庭のホテル東京」(千代田区)では2022年から「eco庭」と題したプロジェクトを始めた。腐葉土作りや屋上菜園を通し、ホテルで発生した廃材のリサイクルなどを進めている。
屋上菜園では当初、ホテルで使ったコーヒー豆が入っていた麻袋をプランター代わりに使用。ただ麻袋は耐久性が弱く、土が袋の外に流出するなどプランターには不向きだった。そこで目をつけたのが、宿泊客がホテルに置き忘れるなどしたスーツケースだ。
大川和哉総支配人によると、ホテルの客は約9割が外国人といい、「コロナ禍明けごろから訪日客が増え始め、スーツケースの置き忘れも増えている実感がある」と話す。最近では、月10個ほどが置き忘れられているという。
スーツケースは一定期間ホテルで保管された後、持ち主が引き取りに来なければ、一部がプランターへと作り替えられる。プロジェクトリーダーの高田陽子さんによると、キャスターなどが壊れていないプラスチック製のものがプランター転用に適しており「保水性が抜群に良く、キャスターやハンドルがあるため移動も楽」と語る。
これまでに栽培した野菜や植物は約40種類に上る。野菜やハーブはホテル内のレストランで提供されることもあり、高田さんは「お客様に採れたてだと説明すると喜んでもらえる」と笑顔を見せる。屋上菜園があると知り驚く客もいるという。
同ホテルは、近隣学校でスーツケースからプランターを作る体験会を開くことなどを検討している。高田さんは、宿泊客に喜んでもらうことが第一とした上で「資源を大切に使う取り組みを通じて、地域とのつながりも強化していきたい」と力を込めた。
〔写真説明〕スーツケースプランターが並ぶホテルの屋上菜園=5月、東京都千代田区
2026年09月24日 07時06分