
最大震度7を観測した熊本地震で災害対応に従事してきた自治体職員の中には、10年前の地震で被災し、その後役所に入った若手もいる。「次は自分が支える側になりたい」。28日で発生から3カ月が過ぎた被災地で、初心を胸に復旧・復興や日々の業務に汗を流している。
2016年4月に震度7の揺れが2度襲った熊本県益城町で中学3年時に被災した中瀬愛優さん(25)もその一人だ。避難所で支援に奔走する行政職員の姿に憧れた。24年に熊本市に入り、希望していた男女共同参画課に配属された。
かつての避難所を「プライベートな空間がなかった」と振り返る。性別、年齢に関係なく雑魚寝だったことや、自衛隊が用意した女性用風呂の列に並ぶ小学校高学年ほどの男児と母親の姿が記憶に残っている。親子の事情に思いを巡らせつつ、「正直、嫌だった」と回想する。
「自分と同じような思いをしている子どもたちがいないか」。今年7月の地震後、市内の避難所を巡回し、更衣室の環境や生理用品の備蓄の数に気を配った。当時を思い出すことで苦しさも感じたというが、「いい方向に経験を生かせた」と語った。
県税務課の藤島大志さん(23)は中学1年で被災し、益城町の避難所に2、3カ月身を寄せた。「今度は自分が何か貢献できないか。支える側になりたい」との思いを募らせ、大学卒業後の今年4月、県に入庁した。
それからわずか4カ月で今回の地震が発生。「1年目でできることも限られているが、やれることからやろう」と心に決めた。震度7を記録した氷川町で、公費解体や災害廃棄物に関する相談業務に当たった。満足に入浴できなかった10年前、「ボディーシートは足りていますか」と積極的に被災者に寄り添っていた人を思い出し、親身な対応を心掛けた。
被災者からの「ありがとう」の言葉に「やりがいを実感した」という藤島さん。被災した経験があるからこそ、被災者の気持ちも分かるという。「県民のために何ができるかを常に考えながら、業務にまい進したい」と力を込めた。
〔写真説明〕取材に応じる熊本市職員の中瀬愛優さん=22日、同市役所
〔写真説明〕取材に応じる熊本県職員の藤島大志さん=27日、県庁
2026年10月29日 07時04分