ヒズボラの武装解除「揺るがず」=地域情勢変化が後押し―レバノン首相側近



レバノンのサラーム首相の側近ガッサン・サラメ氏がベイルートで時事通信の取材に応じ、レバノン政府が取り組むイスラム教シーア派組織ヒズボラの武装解除に関し「方向性は揺るがない」と述べ、地域情勢の変化などを理由に実現可能との見方を示した。インタビューは23日、イスラエルとヒズボラの停戦発効から半年たつタイミングで実施。主なやりとりは次の通り。

―レバノン政府は正規軍をしのぐ力を持つとされてきたヒズボラの武装解除をどう進めるのか。

政府は全土で統治能力を再建すると決め、軍事組織は国が唯一所有すると宣言した。パレスチナ難民キャンプの武装グループやヒズボラに対処することとなる。

ヒズボラと軍は連携し、停戦で定められたヒズボラの南部からの撤退を進めている。軍はヒズボラに代わり南部の隅々に部隊を展開させているが、イスラエル軍は停戦合意を履行せずに5カ所の拠点を占領しているのが実態だ。

武装解除は南部の撤退完了後、ほかの地域に広げる。アウン大統領はヒズボラとの対話によって解除を決定し、ヒズボラの国会議員から公式な反対意見は出ていない。

―2006年にイスラエルと衝突した後の停戦時にも武装解除がうたわれ、進まなかったが。

ヒズボラを取り巻く政治・安全保障環境が当時と全く違う。今回の戦闘でヒズボラは(カリスマ的な最高指導者ナスララ師を失うなど)大打撃を受け、後ろ盾のイランも弱体化した。イランやヒズボラと密接な関係にあったシリアのアサド政権は倒れた。

―イランとシリアが再びヒズボラを支援し、レバノン情勢に介入する可能性は。

イランは中東全体で覇権を握ろうとする挑戦的な態度から自衛的な姿勢に変わった。ただ、今後もレバノンに影響力を及ぼそうとするか見極める必要はある。核問題を巡るトランプ米政権との交渉も注視している。

シリアについては、暫定政府が国民の宗教・宗派の多様性を維持した上で安定を築けるかが焦点だ。レバノンには既に約150万人のシリア難民がおり、これ以上受け入れられない。シャラア大統領が掲げる政策やその意図はバランスが取れており評価している。あとはどう行動するかだ。

―イスラエルのサール外相は、レバノンとの関係正常化を望むと発言したが。

イスラエルが停戦合意を履行しないのにどのように和平を進められるのか。相応の条件を整える必要がある。イスラエルが過去の休戦協定も含め適切に履行すれば、正常化を考えるにふさわしい環境が構築されるだろう。



ガッサン・サラメ氏

51年レバノン生まれ。今年2月から文化相を務める。国外での政治、外交経験が豊富。03年のイラク戦争後の復興を担う国連イラク支援派遣団の政治顧問や国連事務総長上級顧問、国連リビア支援派遣団トップを歴任した。国際司法裁判所所長を務めたサラーム首相と関係が深く、政府の外交政策立案に大きな影響力を持つとされる。(ベイルート時事)。

【時事通信社】 〔写真説明〕レバノンのサラーム首相側近のガッサン・サラメ氏=23日、ベイルート

2025年05月31日 13時32分


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