イーロン・マスク氏、政権去る=歳出削減果たせず―米



【ワシントン時事】トランプ米大統領に近い実業家イーロン・マスク氏は28日、X(旧ツイッター)に「特別政府職員としての予定された任期が終了する」と投稿し、トランプ政権を去る意向を明らかにした。行政の無駄を省く新組織「政府効率化省(DOGE)」を率い、政府部門縮小の旗振り役を担ったが、強引な手法に反発は大きく、歳出削減を果たせないまま退場となった。

大口献金者としてトランプ氏の信頼を勝ち得たマスク氏は、政権内外で権勢を振るった。世界最大の援助機関だった米国際開発局(USAID)を「犯罪組織だ」と決め付け、政府縮小の「先輩」であるアルゼンチンのミレイ大統領から贈られたチェーンソーを集会で振り回すなど、過激な言動で耳目を集め続けた。

しかし、DOGEが音頭を取った政府職員の大量解雇や一部政府機関の解体は混乱を招き、野党民主党や労組は「マスクこそ切れ」「影の大統領だ」と批判。内部対立を辞さないやり方を巡っては、ルビオ国務長官やベセント財務長官ら重要閣僚との確執も報じられた。

批判の高まりを背景に、マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務め、本人の富の「源泉」でもあった米電気自動車(EV)大手テスラは急激な販売不振に見舞われた。マスク氏は4月、「テスラにより多くの時間を割く」と表明することを余儀なくされた。

トランプ政権は「歳入より歳出が問題だ」(ベセント氏)とし、歳出削減を掲げるが、トランプ氏肝煎りの大型減税関連法案ではかえって財政赤字が大きく増える見通し。与党共和党の財政規律派からは「DOGEが暴露した無駄の削減を実現する必要がある」(上院議員)との声が上がる。

マスク氏が米テレビに対し、「赤字を増やす大規模な支出法案には失望している」と発言したことが27日伝わると、ボート行政管理予算局(OMB)長官はDOGEが示した削減案を含めた減額修正予算の提案を「来週にも行う」と表明した。トランプ政権が「小さな政府」を志向する限り、マスク氏の隠然とした影響力は残りそうだ。

【時事通信社】 〔写真説明〕政治集会でチェーンソーを持つ米実業家イーロン・マスク氏=2月20日、ワシントン近郊(AFP時事)

2025年05月30日 12時41分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース