第2次世界大戦終結から80年。戦争体験者から直接話を聞ける最後の時代が近づく中、記憶の継承に向け、戦争を知らない世代が奮闘している。平和を次世代につなげるため、各地の学生団体は体験者らと交流会を開き、その証言を小学生に伝えるなどの活動を進める。
学生団体「peace&voice」は4年前から、体験者の話を聞き取り、講演会などで小学生らに伝える活動を続ける。団体には北海道から福岡県まで各地の18人が参加し、岩手、神奈川両県などに住む体験者との交流会を開いてきた。
団体は大学3年小林友香代表(21)が高校2年の時、地方であった空襲などの話が忘れ去られないようにと設立した。交流会では「戦争体験世代は少なくなっていく。若い人に語り継いでほしい」との声を聞いたという。
高齢化に伴い、戦争を語れる体験者を新聞やSNSの情報を基に探しても、見つけられないことも多い。それでも小林さんは「過去に起きたことは変えられないが、未来は私たちが戦争を語り継ぐことで変えられる」と意義を語る。
富山県では高校生9人がボランティア団体「輪音」で活動し、市街地の99.5%が焼失した1945年8月の富山大空襲を伝えている。代表の3年薬師子龍さん(18)は2年前、体験者の話を聞いた時の衝撃から「戦争を知らない世代が平和を考えるきっかけをつくりたい」と団体を設立した。
輪音では地元の小学生を対象に、学童保育で富山大空襲に関する絵本の読み聞かせなどの活動をする。薬師さんは「年齢が近い自分たちだからこそできることがある。次世代に戦争の記憶を残したい」と力を込める。
戦争体験を聞き取ることが困難になる中、新たなやり方を選ぶ団体もある。大学生と社会人で構成する「AOGIRI」は、胎内被爆者47人の証言集を英訳し電子書籍として公開した。
代表の貞岩しずくさん(25)は、戦後90年、100年を見据え、若者が原爆の話に触れる機会を増やそうと考えた。戦争に関心がなかったメンバーも英訳のために証言集を読み、広島平和記念資料館(広島市中区)に足を運ぶことで、原爆を自分の言葉で説明できるようになった。貞岩さんは「戦争体験者から受け取ったものを私たちがどう表現し、伝えていくかを考えていきたい」と話した。
【時事通信社】
〔写真説明〕学童保育の児童らに富山大空襲の絵本を読み聞かせする高校生ボランティア団体「輪音」の薬師子龍さん=8月4日、富山県射水市(同団体提供)
2025年09月01日 07時06分