石破茂首相の退陣表明から一夜明けた8日、自民党総裁選の号砲が鳴った。茂木敏充前幹事長(69)が最初に出馬方針を明言し、林芳正官房長官(64)も意向を固めた。昨年の総裁選で上位となった小泉進次郎農林水産相(44)、高市早苗前経済安全保障担当相(64)の動向が焦点で、この2人を軸に展開するとみられる。
茂木氏は8日、衆院議員会館の自身の事務所に記者団を集め「私の全てをこの国にささげたい」と決意を示した。外相など要職を歴任し、実務能力の高さに定評がある。先陣を切ることで、注目を集める狙いがある。
旧茂木派に所属していた若手・中堅議員が同日昼に国会内で会合を開き、出馬への準備を進めた。茂木氏と近い麻生太郎党最高顧問が率いる麻生派(43人)の支援を期待している。
林氏も外相や農水相など閣僚経験が豊富で、安定感を売りとする。岸田文雄前首相に出馬する意向を伝え、旧岸田派を中心に応援を受ける見通し。林氏が所属する党山口県連は「この大役を託せるのは、林氏しかいない」と記した出馬要請の決議をまとめた。
小林鷹之元経済安保担当相(50)は民放番組に相次いで出演し、「『ワン自民』の体制をつくっていくことが急務だ」と意欲を示した。保守系の中堅・若手議員が支持している。
本命候補の一人とされる小泉氏は農水省で記者団に「何ができるのかよく考えたい」と述べるにとどめた。初挑戦した昨年の総裁選では初回投票で3位だった。今年5月に農水相に就任し、コメ価格の高騰対策に取り組み、注目を集めた。党関係者は「本人は意欲がある」とみている。
小泉氏の後ろ盾となるのは、無派閥議員に影響力がある菅義偉副総裁だ。菅氏との関係を強めれば「操り人形とのイメージがつく」と指摘する党重鎮もいる。
高市氏は表立った動きを見せていないが、側近議員は「出馬は既定方針だ」と説明。党内情勢を見極めてからの表明になるとの見通しを明らかにした。高市氏は前回の初回投票で1位となり、石破氏に決選投票で敗れた。
総裁選は党員・党友も投票する「フルスペック」で行われる方向で、「地方票」の行方が焦点となる。高市氏周辺は「昨年の総裁選後、地方を回ってきた。党員票は確実に獲得できる」と自信を示した。
【時事通信社】
〔写真説明〕農林水産省に入る小泉進次郎農水相=8日、東京都千代田区
〔写真説明〕高市早苗前経済安全保障担当相
〔写真説明〕茂木敏充自民党前幹事長
〔写真説明〕記者会見する林芳正官房長官=8日、首相官邸
2025年09月09日 08時03分