【ロンドン時事】ロンドンで近年、日系企業による不動産投資・開発が盛んになっている。慢性的に供給不足の状況が続いており、オフィス需要は今後も続く見通し。都市化や少子高齢化を背景に日本市場の成長鈍化が進む中、海外市場での投資拡充で、収益拡大を目指す動きが出ている。
調査会社モルドール・インテリジェンスによると、英国の不動産市場規模は2025年に約334億ドル(約5兆円)。年平均成長率は3%で推移すると見込む。
野村不動産英国オフィスの早坂佑喬マネジングディレクターは、ロンドンでの投資は「流動性が高く、海外からの投資マネーも入り込んでおり、売却による投資回収のがい然性も高い」と、魅力を説明。空室率が相対的に低いロンドン中心部のウエストエンド地区でオフィスビル3件を手掛けるほか、今後も投資を継続する考えだ。
企業では、コロナ禍で進んだ在宅勤務からオフィス勤務への回帰を促す動きが加速。三菱地所ロンドン社の鍵冨真一社長は「魅力的なオフィスづくりが非常に重要になっている」と強調した。同社が25日起工式を行ったロンドン中心部に建設予定のオフィスビルでは、全階層にテラスやバルコニーを設置する予定だ。今後5年の着工状況を踏まえると、事務所の拡張などで需要が上回ると予想する。
一方、不動産大手以外にも英国のオフィスビルに投資する動きが出ている。相鉄グループと安田不動産は3月、合弁会社を設立し、ロンドンでのオフィスビル事業に参画。商船三井も6月に傘下のダイビルを通じ、複合ビルを取得した。英不動産大手サヴィルズのディレクター、中島重喜氏は「日本にはいい不動産投資先が乏しく、安定した収入源確保でリスクの少ない英国に注目が集まっている」と話した。
【時事通信社】
〔写真説明〕野村不動産のオフィスビル=26日、ロンドン
2025年09月29日 13時01分