自民党総裁選(10月4日投開票)では5人の候補者全員が外国人受け入れ規制に言及し、主要論点の一つに浮上した。国民の関心が高まる現状が背景にあるが、「共生」の理念とどう両立させるのか。従来の拡大路線との整合性も問われる。
外国人政策が注目を集めたのは7月の参院選が契機。「日本人ファースト」を看板にした参政党が勢いを示し、保守層を引き付けたと分析された。押されるように自民にも規制論が広がった。
最も強い姿勢を示すのが高市早苗前経済安全保障担当相。従来の施策を「ゼロベースで見直す」と明言し、不法滞在対策や土地取得規制を訴えた。所見演説で地元・奈良の観光地で外国人客の「シカ虐待」が起きていると主張し、「何かが行き過ぎている」と強調した。
小泉進次郎農林水産相は「国民の不安に十分応えてこなかった」と従来の政策を問題視。内閣官房に7月に置いた司令塔組織を首相直轄に格上げし、年内に行動計画をまとめる考えを示した。
小林鷹之元経済安保相も「保守」の立場から出入国管理や土地取得規制の強化を提起。茂木敏充前幹事長は「違法外国人ゼロ」へ取り締まり厳格化を呼び掛けた。
林芳正官房長官は公約で触れなかったが、党青年局・女性局主催の討論会で「中長期的には総量のなだらかなコントロールが大事だ」と指摘。全体としてこのテーマにほぼ言及のなかった昨年の総裁選と様変わりした。
政府・自民党は急速な人口減少と労働力不足を背景に外国人材の受け入れを推進してきた。一定のスキルを持つ外国人の在留資格「特定技能」を2019年に導入。27年には技能実習制度に代わる「育成就労」をスタートさせる。外国人労働者は24年に230万人を突破し、12年連続で過去最多を更新した。
経済再生へ訪日客(インバウンド)も重視。30年に6000万人誘致と15兆円消費を実現する目標を立てた。24年の外国人入国者数(速報値)は新型コロナウイルス禍前を上回り、過去最多の3678万人に達した。
こうした中、治安や地域社会への影響を懸念する声は根強い。アフリカと国内4市の交流を図る国際協力機構(JICA)の「ホームタウン」事業は撤回に追い込まれた。
一方で、欧米に見られる「排外主義」に対する危機感も広がる。全国知事会は「多文化共生」の立場を表明。立憲民主党や公明党も同様で、公明の斉藤鉄夫代表は「誤解に基づき不安を感じる方もいる。正確な情報提供が必要になる」と説く。
【時事通信社】
〔写真説明〕成田空港に到着した外国人観光客=6月17日、千葉県成田市
2025年09月29日 07時00分