【ロンドン時事】中国政府が英ロンドン中心部に欧州最大規模の大使館を建設する計画が揺れている。「中国の諜報(ちょうほう)活動の拠点」になることを懸念する住民らが計画に反対。英政府は先週、建設を承認するか否かの決定を先送りした。中国側は「対中関係改善をうたう英政府の姿勢に反する」と反発を強めている。
中国大使館は現在、ロンドンのウェストミンスター区にあるが、これを観光名所として知られるロンドン塔向かいの旧王立造幣局の敷地に移設する計画。中国政府は2018年に約2万平方メートルに及ぶ広大な敷地を購入し、「欧州最大のメガ大使館」(英メディア)が誕生する予定だった。
しかし、移転先となるタワーハムレッツ区の議会は22年、中国が申請した計画を「デモや治安上のリスク」から却下し、24年末にも再申請を認めない決定を下した。最終判断を委ねられた英政府は今年9月に結論を出すはずだったが、1カ月延期し、10月16日に再延期を発表。12月10日に結論が出る予定だが、これも先延ばしされる可能性がある。
政界や治安関係者は、中国が新大使館を拠点に情報収集や工作活動を活発化させたり、在英民主活動家の監視を強化したりすることを懸念している。議会超党派の国家安全保障戦略合同委員会は政府への書簡で「(承認は)長期的国益にならない」と訴えた。
英政府は延期の理由について「詳細を検討するため時間が必要」(首相報道官)と説明。経済重視のスターマー政権は中国との関係立て直しを優先課題に掲げており、対応に苦慮しているとみられる。BBC放送によると、中国外務省は承認再延期を受け「義務を履行し約束を直ちに果たすよう求める。さもなければ、それによって生じる結果は英側が負う」と警告。スターマー首相は安保リスクと経済の間で板挟みとなっている。
【時事通信社】
〔写真説明〕在英中国大使館の移設計画がある旧王立造幣局の敷地(奥)=2024年12月、ロンドン(AFP時事)
2025年10月23日 07時05分